照男「うん。」
なつ「2枚も? じゃあ 明美と行くわ。」
照男「いや…。」
なつ「あっ もしかして 照男兄ちゃんと 一緒に行く?」
照男「あ いや…。 天陽君と行けば?」
なつ「天陽君? 何で?」
照男「ほら 東京で お世話になったんだろ お兄さんに。」
なつ「ああ…。」
照男「漫画映画作ってたんだろ お兄さん。 だったら そういうの いいかなと思って。」
なつ「そんで わざわざ買ってきてくれたの?」
照男「いや たまたま もらったって言ったろ。」
なつ「ああ…。」
照男「2人で行ってこいよ。」
なつ「うん… じゃあ 聞いてみるよ。」
照男「うん。」
なつ「うん。 あっ ありがとう! あっ… じいちゃん 行ってきます。」
回想
泰樹「お前… なつと結婚しろ。」
照男「えっ?」
泰樹「なつと結婚するんだ。 そしたら なつは 正真正銘の柴田家の家族になる。 一生 この家にいることになるんだ。」
照男「何言ってんだよ…。」
泰樹「すぐに そうなれとは言わん。 そうなるように 心の準備をしていけばいいんだ。」
照男「準備って…。」
泰樹「当分 なつには言わん。」
照男「ちょっと待って!」
泰樹「お前には できる! できるだろ。」
回想終了
道中
<冬の間は 自転車が使えず スキーと鉄道で通学します。>
なつ「夕見! 大丈夫? 朝方2時間しか寝てないしょ?」
夕見子「大丈夫。 倒れるくらいで寝ると ちょっとの睡眠時間でも 頭が すっきりするのさ。」
なつ「体 壊すべさ。」
夕見子「受験生だから しかたないしょ。」
なつ「本当に すごいな 夕見は。」
夕見子「本当は 北大なんて 行かなくてもいんだけどね。」
なつ「じゃあ 何で行くの? 札幌なんて遠いとこへ。」
夕見子「だって 負けたくないしょ。」
なつ「人に負けたくないから行くの?」
夕見子「人っていうか… そんなの無理だとか 女のくせに無理だとか そういう世間の目にさ。」
なつ「う~ん… よく分かんない。」
夕見子「私は なつみたいに 分かりやすく戦ってないからさ。」
なつ「どういう意味?」
夕見子「なつは どこにいたって戦ってるしょ。 私には 何もないから 自分の生きる場所は 自分で選べるような人間になりたいのさ。 ごめん 寝不足で 訳 分かんないこと言ってるね。」
なつ「分かるわ そんくらい…。」