牧場
なつ「本当に悪かったね。」
天陽「俺はいいから 早く戻れ。」
なつ「天陽君に 話したいことがあって。」
天陽「俺に?」
なつ「うん。 その前に 天陽君の話って何? 昨日 聞くはずだったやつ。」
天陽「ああ… それは また今度でいいや。 そっちの話は?」
なつ「私ね やっぱり 漫画映画をやってみたい。 日本で これから アニメーションを作る人 アニメーターっていうのになりたい。 いや… なるって 今朝 そう決めたんだわ。」
天陽「今朝?」
なつ「うん。 それを 天陽君に 一番に話したかったのさ。」
天陽「そうか… 決めたか…。 うん… なっちゃんの決意が聞けて よかったさ。」
なつ「まだ 許してもらったわけじゃないけど…。」
天陽「俺は いいと思うよ。 頑張れ。」
なつ「うん!」
天陽「うん。 したら 今日は帰って ゆっくり休め。」
なつ「ありがとう。 したら 天陽君 またね。」
天陽「うん。 また。」
居間
<それから その晩 なつは 夕飯を 普通に食べました。>
なつ「本当に 雪が降ってなかったら 普通に 熊が出てきそうなとこに 住んでんだわ。 そこで 熊彫って暮らしてんのさ。」
明美「え~ そんなとこに住んでて おっかなくないの?」
なつ「熊も なれたもんで 来ても お互い びっくりもしなくなったんだって。 それどころか その家の なまら美人の娘の砂良さんに 熊が ラブレター持ってきたっていうもね。」
明美「うそだ! 熊が 手紙書けるわけねえべさ。」
なつ「手紙でねえのさ。 サケ。 サケくわえて持ってきたんだって。」
明美「えっ!」
なつ「アキアジが 熊のラブレターなんだわ。」
明美「うそだ~!」
<そして 食事のあと なつは 切り出したのです。>
なつ「父さん 母さん じいちゃん みんな…。」
夕見子「うん? 何さ みんなって…。」
なつ「お願いがあります。」
富士子「何なの? 改まって。」
なつ「私を 東京に行かして下さい。」
富士子「いつ? 冬休みの間に?」