連続テレビ小説「なつぞら」第52話「なつよ、夢をあきらめるな」【第9週】

信哉「なっちゃん…。」

なつ「お兄ちゃん…。」

咲太郎「おう 何だ? なつ。 こんなとこに来んな お前。」

なつ「何してんの?」

「この子 店の子?」

咲太郎「違うよ この野郎! この子に触んな!」

「何だ 客に向かって その口は!」

レミ子「あんたは まだ 客じゃないでしょうが!」

信哉「すいません! すいません すいません…。 すいません…。」

「チッ!」

咲太郎「信が なつを連れてきたのか!」

信哉「すまん…。」

レミ子「ちょっと 仕事の邪魔しないでよ!」

なつ「お兄ちゃん!」

咲太郎「おい なつ ちょっと来い! 一体 何なんだ?」

なつ「分かんない…。 お兄ちゃんが 何やってんのか 私には全然分かんない。」

咲太郎「何 言ってんだよ。 何も悪いことはしてないよ。 なつ お前がつらいのは分かるけど もう忘れろ。 あんな会社 入らなくてよかったよ。」

なつ「えっ?」

信哉「おい 咲太郎。」

咲太郎「お兄ちゃんは 本気で そう思ってるよ。 俺たち 孤児院にいたような人間は いつまでたっても 差別を受けることがあるんだよ。」

信哉「咲太郎 お前 自分が何したのか分かってんのか!」

なつ「いいから 信さん。 お兄ちゃんは 今 何やってんのさ?」

咲太郎「だから 見てのとおり サンドイッチマンだよ。 鶴田浩二の歌が はやってから 人気があるんだよ。」

なつ「それが お兄ちゃんのやりたいこと? 全然分かんないよ。」

咲太郎「何が分からないんだ? マダムに 借金を返すために 働いてるんだろ。 お前に 少しでも 肩身の狭い思いを させないために働いてるんだ。」

なつ「私のためなの? だったら やめてよ! 私… タップダンス踊ってる お兄ちゃん見て 何だか 悲しくなったよ。 だって お兄ちゃん 昔と ちっとも やってる変わってないんだもん…。 焼け跡で進駐軍に向かって踊ってる時と やってること おんなじじゃない! 昔は楽しかったけど… 今は悲しかった。」

レミ子「ちょっと待ちなさいよ! あんたは 北海道で生きるために 牛の乳搾りしてたんでしょう? こっちだってね 生きるために 人前で踊ってんのよ! バカにしないでよ!」

なつ「バカになんかしてません。 お兄ちゃんのやりたいことが 分からないと言ったんです。」

咲太郎「だから… 俺は ムーランルージュを 復活させたいんだって言ったろう。」

なつ「それだって 亜矢美さんのためでしょ!」

咲太郎「お前に 何が分かるんだ?」

なつ「分るよ! ムーランルージュを復活させるために 人にだまされて お金を借りて その肩代わりを マダムにさせたんでしょ? ねえ それじゃ 人に迷惑かけてるだけじゃない!」

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