連続テレビ小説「なつぞら」第60話「なつよ、絵に命を与えよ」【第10週】

東洋動画スタジオ

会議室

仲「結論から言うと 不合格でした。」

なつ「分かりました。」

仲「悔しそうじゃないんだね?」

なつ「悔しいです。 とっても…。 けど それは 自分のせいですから。」

井戸原「うん… どうして 動画を こんなに描いたんだい? 15枚でいいところを 30枚も描いたのはどうして?」

なつ「見たら イメージが湧いてきて どうしても描きたくなったんです。 でも ダメです。 自分が描きたいものに 自分の手が追いついていかないんです。 それが もどかしくて…。 自分が下手なんだって よく分かりました。 それが悔しくて…。 今の自分には おいしい牛乳は まだ搾れないんだって よく分かりました。」

井戸原「えっ… うん? えっ 何で牛乳なの?」

なつ「あ… 乳牛を育てることなら ちょっとは自信があるので。」

井戸原「乳牛…?」

なつ「すいません 何でもないです。」

仲「動画の勉強は続ける?」

なつ「もちろんです! それは 続けさせて下さい。 お願いします。」

仲「分かった。 それじゃ もう行っていいよ。」

なつ「はい。 今回は ありがとうございました。:

井戸原「お疲れさん。」

井戸原「参ったね…。 イメージに 手が追いつかないか…。 あれで もう 我々と同じことで悩んでるんだからね。」

仲「あの子も 一生悩むんでしょうね…。」

井戸原「うん…。」

阿川家

砂良「あら いらっしゃい。」

天陽「こんにちは。」

弥市郎「よう 天陽! お前の絵 展覧会で 賞取ったんだってな。」

天陽「あ… まあ。 初めて そういうところに出品したんで 素人の絵が 珍しかったんじゃないですかね。」

砂良「なっちゃんも喜んだでしょう。 なっちゃんには知らせたの?」

天陽「あっ うちの牛乳 飲んで。」

砂良「持ってきてくれたの?」

天陽「うん。」

砂良「ありがとう。」

(戸をたたく音)

砂良「あっ はい ちょっと待って。 あ… ちょっと ごめんね。」

菊介「こんちは!」

弥市郎「おお どうした?」

菊介「どうも。 いや~ しばれるね。」

砂良「菊介さん?」

菊介「おう…。 そうだ。 柴田牧場の菊介さんだ。 今日 うちのバター届けに来たんだわ。 ほい これ。 うめえぞ。」

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