信哉「それで やっと その知り合いのうちの一人が 今の幸一さんから 来た年賀状を 持ってたんだ。 それで 船橋の住所が分かったんだよ。」
なつ「うん…。」
信哉「幸一さんはね 戦争に行って 足をけがしたらしい。 それで 農業ができなくなって 引っ越ししたらしいんだ。」
咲太郎「それで 千遥は 今も一緒にいるんだよな?」
信哉「分からない。 その住所までは見に行ったんだ。 それで それらしい女の子は見かけたけど 声はかけなかった。」
なつ「千遥かどうか 分からなかったの?」
信哉「僕の記憶では分からなかった… ごめん。」
亜矢美「しょうがないよ 5歳の時に ねえ 会ったっきりでしょ?」
なつ「ねえ お兄ちゃん 会いに行こう!」
咲太郎「うん…。」
なつ「会うのがダメなら 見るだけ。 とにかく 千遥が無事なことを確認したい。」
咲太郎「そうだな…。 よし すぐに行こう。」
なつ「うん。」
信哉「これが 船橋の住所だよ。」
なつ「ありがとう。」
亜矢美「ちょっと待った。 今 すぐ行こうって言ったね?」
咲太郎「うん。」
亜矢美「いつ行く気? 今からすぐ? それとも明日?」
信哉「向こうが 家にいそうな時の方が いいんじゃないか?」
咲太郎「だったら やっぱり休日か。」
なつ「お盆…。 ねえ お盆にしよう!」
咲太郎「お盆?」
なつ「8月15日…。 15日に会いに行こう。」
咲太郎「そうか…。」
信哉「8月15日… それはいいね。」
なつ「その日なら 千遥も きっと 私たちのことを 思い出してくれるかもしれない。 そでしょ?」
信哉「覚えていればな。」
なつ「覚えてるよ! 千遥だって忘れるはずない。 あんなにつらい思いしてきたんだから… その日々を忘れるはずない。」
信哉「だけど… つらいことばっかりじゃ なかったはずだよ。 楽しいことも いっぱいあった。」
なつ「うん…。」
回想
咲太郎「お~ 来た 来た 来た!」
信哉「おっ 頑張れ 頑張れ 頑張れ…!」
なつ「鯉 久しぶりだね!」
信哉「うわっ 久しぶりだ!」
回想終了
咲太郎「よし… 8月15日 会いに行こう。」
なつ「うん!」
2階なつの部屋
<8月15日 今年も その日はやって来ました。>
なつ「亜矢美さ~ん! ねえ 亜矢美さんってば 早く!」
亜矢美「は~い は~い は~い はいはい。 お呼びでござんすか?」
なつ「どうしましょう? どれを着ていけばいいと思いますか?」
亜矢美「いつもの感じでいいんじゃないの。」
なつ「だって あんまり変な恰好してたら 妹に警戒されませんか?」
亜矢美「警戒? 何を?」
なつ「知りませんけど…。」