信哉「子どもの頃に?」
咲太郎「大丈夫だよ なつ。 警察に届けたと言ってるし… もし 千遥の身に 何か悪いことが起きたんなら そういう知らせが とっくにあったはずだよ。 な 信 そう思うだろ?」
信哉「ああ…。」
亜矢美「そう… そうね その方が可能性として高いわね。 そういう知らせがないってことは きっと どこかで無事に生きてるってことだわ。」
なつ「道で暮らす子も 亡くなる子も 街で まだ たくさんいた頃だよ…。」
咲太郎「それでも 千遥は… どこかで生きてるよ!」
なつ「そんな奇跡 信じろって言うの? お兄ちゃんの手紙だって 持ってってるんでしょ? それなのに どして連絡がないの! 千遥は 6歳だったんだよ…。 どうやって 一人で生きていくのさ?」
咲太郎「一人じゃないかもしれないだろ。 俺やお前も 一人じゃなかった。 だから生きられた。 俺たちが生きられたのだって奇跡だろう。」
なつ「私は… 何も知らないまま 今まで生きてた…。 千遥の悲しみや絶望を知らないまま… 幸せに…。 千遥を見捨てたのに…。」
咲太郎「なつ!」
信哉「なっちゃん…。」
亜矢美「そんなふうに考えちゃダメ。」
なつ「お兄ちゃん… 奇跡なんてないんだわ。」
2階なつの部屋
富士子『なつ 二十歳の誕生日 おめでとう。 東京へ行って 1年半だね。 仕事には 少し慣れたかかい? なつのことだから きっと 夢中で頑張ってるんだろうね。 二十歳の記念に 万年筆を贈ります。 父さんと選びました。 たまには 手紙書いてね。 みんな喜びます。 母より』。
なつ「千遥…。 ごめんね…。」
<なつよ 二十歳の誕生日 おめでとう。 どうか その夢が その道が いつまでも続きますように…。>