2階・なつの部屋
なつ「どうぞ。」
信哉「うん。 なっちゃん 僕にできることがあれば 何でも言ってくれ。 無駄かもしれないけど… もっと… もっと 千遥ちゃんの力に なれることがあればいいんだけどね。」
なつ「信さん… 千遥のことは 誰にも言わないで。 心配かけるから。」
信哉「分かった。」
なつ「北海道には 手紙を書いて知らせておく。 千遥が 今からでも 手紙を読んで 頼らないとも限らないしょ?」
信哉「なっちゃん…。」
なつ「暑いね…。 ねえ 信さん。」
信哉「うん?」
なつ「6歳の女の子が いくら つらいからといって 読めもしない手紙を持って 大人のいる家から逃げ出すなんてこと そんな勇気 よく持てたよね。 お兄ちゃんも 私も そういう千遥を信じてる。 私は 千遥の生きる力を信じてるから!」
信哉「うん。 そうだね。 僕も信じてる。」
なつ「ありがとう…。」
信哉「うん。」
1階店舗
亜矢美「今日のおでんは よ~く しみてるよ。 食べる?」
なつ「食べる。」
咲太郎「ただいま。」
3人「お帰り!」
咲太郎「何だよ 3人そろって…。 あ… なつ お前んとこ 新しい作品やるんだってな。」
なつ「うん そう…。」
咲太郎「うちの亀山蘭子が また その役の声をやることになったんだ。」
なつ「本当に!?」
咲太郎「ああ。 『白蛇姫』の評判がよかったからな。 ま とにかく また なつと一緒に仕事ができるな。」
なつ「うん…。 あっ… ねえ お兄ちゃん これだ!」
咲太郎「えっ?」
なつ「ここ… ここに名前載るっしょ! 必ず 私の名前を載せてみせる!」
咲太郎「うん…。」
なつ「ほら! そしたら どこかで これを千遥が見たら 映画のポスター見たら 私の居場所が分かるっしょ!?」
咲太郎「そうか… そうだな!」
信哉「それ いい考えだよ!」
亜矢美「だったら もっと もっと頑張らないとね 早く 名前が載るように。」
なつ「はい。」
亜矢美「私も頑張ったな ムーランルージュの看板に がんと 自分の名前を載せたくって。 ほら 食べな。」
なつ「亜矢美さん 私 頑張るから…。 絶対 頑張る。」
亜矢美「よし。」
咲太郎「頑張れよ なつ。」
亜矢美「お前だよ 頑張んのは。」
咲太郎「あ… うん。」
信哉「咲太郎。」
咲太郎「何だよ…。」
信哉「しっかりやれよ。」
咲太郎「頑張るか。」
2階・なつの部屋
なつ「ストレッチ アンド… スクオッシュ…? つぶす…。 顔の伸び縮み。 あ~ もう… もっと 英語の勉強しとけばいかったわ…。」
<なつは また 一心に夢を追い始めました。 その いつかを信じて…。>
柴田家
居間
なつ『母さん 千遥のことは 兄と相談して 改めて 警察に届けることにしました。 千遥は 必ずどこかで元気にしています。 母さん 心配しないで。 私は 千遥のためにも 一生懸命生きてます。 千遥にも 私の母さんみたいな人いることを 心から祈ります。 信じています。 母さんも 一緒に信じて下さい』。
富士子「なつ…。」
<そして 秋になり 『わんぱく牛若丸』の制作が始まりました。>
東洋動画スタジオ
作画課
下山「大体 片づいたかな? みんな。」
堀内「はい。」
下山「うん。 え~ これが うちのチームです。」
なつ「下山班… ですね。」