山田家
居間
靖枝「ゆっくりして下さい。」
タミ「なっちゃん 相変わらず何もないけど 食べて。」
なつ「わあ… おばさんのそばがき 懐かしい…。」
正治「なっちゃん 牛乳… は もう さんざん飲んだか。」
なつ「ありがとうございます。」
天陽「今は 牛が2頭いるんだわ。」
正治「もっと数を増やしたいんだけどね。」
天陽「まだ サイロも建ててないし 牛小屋も広げないとな。」
正治「それは お前が絵に使ってるからだべ。」
靖枝「お義父さん したって それも大事だから。」
正治「分かってるけど…。」
(笑い声)
なつ「ありがとうございます…。 おいしい!」
タミ「なっちゃん 里帰りは初めてかい?」
なつ「うん… 実は 妹が来たんだわ。」
タミ「妹?」
天陽「もしかして 千遥ちゃんのことかい?」
なつ「そう。」
天陽「本当かい!」
正治「子どもの頃 別れたままだった妹さんか…。 えっ 柴田の家に来たんかい?」
なつ「そなの…。 妹は 今度 結婚するみたいで そんで 別れを言いに来てくれたんだわ。」
タミ「結婚するのかい? 妹さんは いくつになったのい?」
なつ「18です。」
タミ「そうかい… 早いもね 時間がたつのは。」
天陽「別れを言いに来たって どういうことだ?」
なつ「うん… 千遥は 今 ある人の養女として暮らしててね 昔のことは 結婚する相手の家には 知られたくないから もう二度と会うことはできないって。」
靖枝「そんな…。」
タミ「そういうことで 差別されることがあるって聞くからね…。」
正治「戦争の被害者なのにな 全く おかしな話だわ。」
天陽「でも 千遥ちゃんには会えたんかい?」
なつ「いや… 結局 すれ違いで 会うことはできなかったけど… 千遥の気持ちは受け止めれたし 私の気持ちも受け取ってもらえた。」
天陽「うん… そうか。」
なつ「そう思う。」
タミ「東京で なっちゃんは結婚するの?」
なつ「え? 何言ってんの おばさん。 そったらこと考えてもないわ。」
正治「そんな話はいいべや。」
なつ「今の仕事が面白くて そのことしか考えてないから。」
天陽「そんなに楽しいか? 漫画映画の仕事は。」
なつ「うん… あっ 今度 原画を任されることになってね。 まあ 短編だけど。 そんで すぐ東京に 戻らなくちゃなんないのさ。」
天陽「また しばらく会えなくなるんか。」
なつ「うん。 で… でも ほら もう寂しくないっしょ。 牛も 2頭に増えたし…。」
(笑い声)