馬小屋
なつ「うわ! これが 展覧会で入賞した作品?」
天陽「うん。 こっちが最初ので こっちが去年の。」
なつ「あっ 私も 馬の絵を描いたんだわ 東京で。」
天陽「あっ 見たよ 映画。 帯広で あのディズニー見た映画館で… 『牛若丸』。」
なつ「本当… わざわざ ありがとう。」
天陽「まあ 別に見なくても なっちゃんが 楽しんで描いてるなら それでいいんだけどね 俺は。」
なつ「ハハッ…。」
なつ「昔の友達は ありがたいね。 いつまでも応援してくれて。」
天陽「あっ 十勝農業高校の演劇部で一緒だった 居村良子さんと 門倉 努がいるべ?」
なつ「うん よっちゃんと番長?」
天陽「うん。 あの2人が 今 青年団で演劇やってんだわ。」
なつ「へえ~ 本当?」
天陽「その舞台美術を また頼まれて 俺が 背景を描いたんだ。」
なつ「天陽君もやってんの?」
天陽「うん。 その舞台を 妻も手伝ってたんだわ。」
なつ「あ…。」
天陽「それで仲よくなって 気付いたら 好きになってた。」
なつ「そう。」
天陽「うん…。」
なつ「いかったね。 いい人が見つかって。」
天陽「まあ 結婚して喜んだのは 俺より 母さんや父さんだったけどね。」
なつ「ふ~ん。」
天陽「俺も いかったと思ってる。 やっぱり 開拓農家の娘だし ここでのつらいことも 一緒に楽しめるから。」
なつ「そう…。」
天陽「うん。」
靖枝「コーヒーいれましたよ。」
天陽「おお ありがとう。」
なつ「ありがとうございます!」
靖枝「いえ… どうぞ。」
なつ「頂きます。」
靖枝「熱いかもしれないけど。 はい 陽ちゃんも。」
天陽「ああ ありがとう。」
なつ「頂きます。 おいしい…。」
靖枝「いかった! ハハハ…。」
山田家の畑
天陽「したらな。」
なつ「うん。」
靖枝「また来て下さい。」
なつ「お邪魔しました。」
柴田家
詰め所
なつ「じいちゃん ただいま。」
泰樹「おお お帰り。」
なつ「私も手伝う。」
泰樹「いや… いいから。 天陽に 会うてきたんか?」
なつ「うん…。」
泰樹「そうか。」
なつ「いいお嫁さんだった。」
泰樹「うん。」
なつ「千遥の結婚も あんなふうになるといいな…。」
泰樹「うん。」
なつ「やっぱり手伝う。 じいちゃん…。」
泰樹「うん?」
なつ「もし 私が ここに残って 酪農を続けてたら じいちゃんは うれしかった?」
泰樹「そったらこと考えんな。 そったらこと考えるなつには なってほしくない。」
なつ「けど じいちゃん… 私だって 寂しいんだわ…。 じいちゃん… 寂しくて… 寂しくて たまんないんだわ…。 じいちゃん…。」
泰樹「なつ…。」
なつ「ん?」
泰樹「わしだって寂しい…。 お前が おらんようになって ずっと寂しい…。 寂しくて たまらん…。」
なつ「じいちゃん…。」
泰樹「人間は 一人で生きようと思えば 寂しいのは当たり前じゃ。 それでも 一人で生きなきゃならん時が来る。 誰といたってもだ。 家族といたって 一人で生きなきゃならんもんだ。 だから支え合う。 離れていたって 支え合える。 わしとお前は 支え合ってるべ?」
なつ「うん…。」
泰樹「千遥と会えんで寂しいのは わしも同じじゃ。」
なつ「ありがとう。」
泰樹「天陽は どうだっていい…。」
なつ「ハハ…。 そんなこと言わずに 天陽君もお願いします。」
泰樹「そうか ハハ…。」