咲太郎「すみません!」
藤井「(ため息) 口と全然合ってないだろ! あんた 何見てしゃべってんだ!」
咲太郎「島貫さん まず映像見て 口と呼吸 合せて下さいよ!」
島貫「お前ね 芝居というのは間だよ。 自分の間で芝居をしなかったら 役者の個性は死ぬんだ。」
咲太郎「吹き替えは それじゃ できないんです!」
松井「こいつには無理だ。 吹き替えってのはな 人の間を盗むんだよ。」
島貫「そんな泥棒のまねができるか。 お前じゃないんだ。」
松井「あ?」
藤井「ジョージ」
雪次郎「はい。」
藤井「それから なまってるよ! お前 どこの生まれだ?」
雪次郎「北海道の十勝です。 えっ なまってましたか?」
咲太郎「なまってた。」
藤井「大富豪のお付きが なまるなよ! はあ…。 頭から もう一回いくよ。」
咲太郎「頼むよ みんな!」
雪次郎「すいませんでした。 『あんたは引っ込んでろよ。 ゴロツキ…』。」
蘭子「『あんたは』。」
雪次郎「『あんたは引っ込んでろよ』。」
蘭子「『あんたは』。」
雪次郎「『あんたは引っ込んでろよ』。 『あんたは引っ込んでろよ!』。」
一同「『あんたは』!」
島貫『話は終わりだ! さあ ジョージ とっとと…』。
遊声『おいおい ちょっと待ってくれ』。
島貫『おう? あんたは 一体 どこの…』。
蘭子『あの子の新しい父親です』。
島貫『あんたの新しい男か? それじゃ 考えるまでもない。 ますます ここには デービスを置いておくわけには…』。
遊声『力ずくで 子どもを奪うことはないだろう』。
雪次郎『あんたは引っ込んでろよ! ゴロツキだろ? 痛え目に遭うぜ…』。
スピーカー・藤井『ダメだ! ストップ!』。
雪次郎「えっ? なまってましたか?」
島貫「お前 いい加減にしろよ バカヤロー!」
松井「お前もだよ! 俺の出番は いつ来るんだよ!」
スピーカー・藤井『おい どうなってんだよ! 直ってないじゃないか!』。
咲太郎「すみません! もう一度お願いします!」
雪次郎「すみませんでした。」
遊声「おい。 本当に頼むよ。」
雪次郎「はい…。」
<結局 これが 7回も繰り返されまして…。>
(ノックとドアが開く音まね)
島貫『話は終わりだ! さあ ジョージ とっとと連れてこい』。
遊声『おいおい ちょっと待ってくれ』。
島貫『うん? あんたは誰だね?』。
蘭子『あの子の新しい父親です』。
島貫『あんたの新しい男か? それじゃ 考えるまでもない。 ますます ここには デービスを 置いておくわけにはいかないね』。
遊声『力ずくで 子どもを奪うことはないだろう』。
遊声『あんたは引っ込んでろ! ゴロツキだろ? 痛い目に遭うぜ。 ハッ』。 『ウッ!』。 『俺は デービスの父親だ』。