連続テレビ小説「なつぞら」第93話「なつよ、恋の季節が来た」【第16週】

佐知子「なっちゃん いらっしゃい。」

なつ「あっ 佐知子さん。 姉妹の夕見子です。」

佐知子「あっ 北海道の? ようこそ いらっしゃいませ。」

夕見子「どうも。」

野上「お席に ご案内して。」

佐知子「はい。 どうぞ。」

雪次郎「お久しぶりです。」

佐知子「咲ちゃんは元気?」

雪次郎「えっ?」

なつ「佐知子さん もしかして まだ…。」

佐知子「なっちゃん 私… 今度 結婚するのよ。」

なつ「えっ 結婚!?」

佐知子「シッ…。 とりあえず座って。」

雪次郎「あっ 座っちゃった…。 おめでとうございます。」

佐知子「ありがとう。 でも とうとう 咲ちゃんを待てなかったわ。」

なつ「いや お兄ちゃんも きっと喜ぶと思います。」

佐知子「マダムの紹介で お見合いをしたのよ。 いい人だし 生活が安定してるし。 咲ちゃんには悪いけど…。」

なつ「悪くないです。」

佐知子「咲ちゃんが悪いのよ。 私を放っておくから。」

なつ「私も そう思います。」

佐知子「ご注文は?」

なつ「あっ バターカリー 3つ。」

雪次郎「あっ 僕は…。」

なつ「今日は おごる。」

雪次郎「3つ。」

佐知子「かしこまりました。」

雪次郎「すごいな… ずっと待ってたんだね。 つきあってもないのに。」

なつ「でも よかった。」

夕見子「何が よかったのさ? 結局 女は 結婚して生活の安定を得るのが 一番だと思ってるの? なつも。」

なつ「夕見は その人と結婚したくないの?」

夕見子「結婚なんかしなくたって 一緒に生きる道があればいいでしょや。 その方が お互いに 変な甘えが生じなくていいの。」

なつ「どんな結婚するかは 自分や相手次第じゃないの?」

雪次郎「結婚できねえからじゃないのかい?」

夕見子「えっ?」

雪次郎「向こうには 親の決めた相手がいるって…。」

夕見子「そんな生き方を捨てたあの人だから いんじゃないの。 何も持たんで 一から生きようとしてる あの人とだから 結婚なんかしなくたって 一緒に生きることができると思ったのさ。」

なつ「したら 結婚って何なのさ…。」

光子「いらっしゃい。」

なつ「あっ マダム。」

雪次郎「マダム ご無沙汰してます。」

光子「元気にしてた?」

雪次郎「はい。」

光子「帯広のご家族に ちゃんと連絡しないとダメよ。」

雪次郎「はい。 ちゃんとしてます。」

なつ「マダム 北海道から来た 姉妹の夕見子です。」

光子「ああ あの北海道大学に 通ってらっしゃる?」

夕見子「はい。 なつが いつもお世話になってます。」

光子「あなたが 大学に合格された時には 新聞にも載ったそうね。 ご家族にとって あなたは期待の星ね。」

なつ「マダム 佐知子さんが結婚するって さっき聞きました。」

光子「ああ そうなの。 あなたのお兄さんも心配してたからね。」

なつ「お兄ちゃんが?」

光子「さっちゃんを幸せにしてやってくれって ずっと言われてたのよ。 まあ 言われなくたって 私だって考えてましたけどね。」

なつ「そうなんですか…。」

光子「咲ちゃん 新しい会社を始めたんだった?」

なつ「はい。」

雪次郎「外国映画の吹き替えなんかをやったりする 声の会社です。」

光子「相変わらず 危なっかしいところはあるけど 咲ちゃんも ようやく 自分のために動き出したってところね。 なっちゃんの開拓精神が 咲ちゃんの心も強くしたのよ。」

なつ「いえ 私は何も…。」

光子「夕見子さん どうぞ 東京で ゆっくりしていってね。」

夕見子「はい。 事によると ずっと新宿にいるかもしれません。」

光子「えっ?」

雪次郎「えっ?」

なつ「ちょっ… 何言ってんのさ。」

夕見子「私にも 開拓精神があるんです! マダム ご相談があるんですが…。」

なつ「夕見?」

おでん屋・風車

1階店舗

亜矢美「ジャズ喫茶?」

なつ「はい。」

咲太郎「新宿で ジャズ喫茶を開きたいっていうのか?」

なつ「それで マダムに相談し始めちゃって どうしようかと思った。」

咲太郎「マダムは 駆け落ちだって知ってるのか?」

なつ「ううん。 大学を卒業してからだと思ってる。 本気なら いつでも力になってくれるって。」

咲太郎「誰にでも 力になるって言うんだよ あいつは。」

なつ「お兄ちゃん! あいつって そんなこと言ったら罰が当たるでしょ!」

亜矢美「物書きの彼を支えようっていうわけか… 相当 入れ込んでるね。」

回想

夕見子「私と この人も同志なんだわ。 男に だまされてるとか そんな心配いらないからね。」

回想終了

なつ「このまま ほっといて いいんでしょうか?」

亜矢美「う~ん… 難しいところだね。 なっちゃんが あの子の友達っていうんなら もう 今は ほっとけ ほっとけって 言うところだけどさ… ね。 家族じゃな…。 でも なっちゃんが一人で悩むことでは もう… ないんでないかい?」

なつ「うん…。」

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