連続テレビ小説「なつぞら」第94話「なつよ、恋の季節が来た」【第16週】

なつ「はあ…。」

美術課

なつ「陽平さん。」

陽平「あっ なっちゃん。」

なつ「背景の森を見せて下さい。」

陽平「いいよ。 いくらでも見てって。 何か悩んでるの?」

なつ「悩んでるなんてもんじゃありませんよ。 イッキュウさんの言うことに ついていけなくて…。 あっ これ… 木の怪物を描いてるんですけど 樹齢が 歩き方に 見えないって言うんですよ。」

陽平「アッハハ… 彼らしいな。 うちら美術に関しても うるさいからね。」

なつ「自分が描かないから 描く人の苦労は考えないんでしょうか。」

陽平「そうじゃないと思うよ。 人に苦労かけてる分 あれは 相当勉強してると思うよ。」

なつ「絵をですか?」

陽平「絵だけじゃないと思うけど。 あっ 天陽の絵も知ってたんだよ イッキュウさんは。」

なつ「えっ… 本当ですか?」

陽平「うん。 帯広で賞もらった時 小さな美術雑誌に載ったんだけど それを見たらしいんだ。 僕の弟かって聞かれて…。 すごく その絵に感動してくれてた。」

なつ「ふ~ん… 天陽君の絵を イッキュウさんが…!」

陽平「彼の演出力は まだよく分からないけど 絵に対する貪欲さは 絵描き以上かもしれない…。 負けないで頑張ってよ こっちも頑張るから。 いい作品にしよう。」

なつ「はい。 頑張ります。」

陽平「うん。」

なつ「お願いします。」

陽平「はい。」

おでん屋・風車

1階店舗

♬~(『ムーンライト・セレナーデ』)

夕見子「いいですね グレン・ミラーは…。」

亜矢美「あらららららら… そったらこと言ってると モダンジャズの彼氏に怒られちゃうよ。」

夕見子「いいんですよ そんなの。 私は 人の好みに合わせる気なんて 全くないんですから。」

亜矢美「ねえ 彼はさ 毎日 今 何やってんの?」

夕見子「原稿書いて 『スイングジャーナル』って雑誌に 持ち込んでるらしいんですけど どうも うまくいかないみたいです。」

亜矢美「そりゃ 最初っから うまくはいかないよ。」

夕見子「当たり前ですよね。 したけど それで落ち込んじゃってて…。 最近は 喧嘩ばっかりしてるんです。」

亜矢美「あっ そうなの…。」

夕見子「あの人は もともと お金持ちのお坊ちゃんで生きてきたから 自立して強くなるためには 少し時間がかかりそうです。」

亜矢美「夕見子ちゃんは冷静なんだね。」

夕見子「お互いに好きになったんですから お互いに強くならなければ 不公平になるだけですよ。 そのために 東京に出てきたんですから。」

亜矢美「ハッ… なるほどね。」

(電話の呼び鈴)

夕見子「あっ 咲太郎さんの仕事の電話でしょうか。」

亜矢美「いいよ いいよ。」

夕見子「あっ。」

亜矢美「はい 風車でございます。」

『北海道音問別4141番からです』。

亜矢美「あっ…。」

『お待ちください』。

亜矢美「間違えました! すいません!」

夕見子「えっ どうしたんですか?」

亜矢美「いや 何か 間違えたみたい。」

夕見子「えっ こっちから言うんですか?」

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