吉平「ほれは 分かっとるが…。」
はな「おら あん時 本当に死ぬ覚悟しただよ。 一遍死んで 生まれ変わったも 同じだ。 おら 生まれ変わった この命を 大事にするだよ。 ふんだから やっぱし 自分の好きな名前を 自分で付け直す事にしただよ。 みんな おらの事は 花子と呼んでくれろ。 朝市 分かっただけ?」
朝市「うん。」
吉平「やっぱし この子は ただもんじゃねえ。 天才か… いや ひょっとしたら 神童かもしれん。」
畑
周造「はな! 病み上がりずら 無理すんじゃねえぞ!」
はな「花子は 平気だ!」
周造「何で はなじゃなくて 花子が そんなにいいだか じぃやんには さっぱり分からん。 どういでだ?」
はな「ほりゃあさ 花子と呼ばれた方が 自分の事を ありがたく思えるじゃんけ。」
周造「う~ん そうさな~…。」
はな「おじぃやんも 自分の事 周造じゃなくて 周右衛門とか周左衛門だと 思ってみろし。」
周造「周左衛門? わしが?」
はな「ほの方が ずっと気持ちいいだよ。 自分の事 ありがたく思えるだよ。」
周造「ほうかな…。」
はな「おら 思う。 人も物も 名前が大事だ。 名前が変われば 見える景色も変わるだよ。 自分が花子だと思うと…。 ほ~ら 風の匂いまで違うじゃん。」
周造「フフフフフフ はなは 本当に面白えボコだ。 じぃやんは はなといると退屈しん。」
はな「ふんじゃあ ずっと おじぃやんのそばにいるさ。 ほれと はなじゃなくて花子だ!」
安東家
ふじ「はなが また何か?」
リン「はなちゃんが病気になって 寝込む前の夜だけんど 朝市が夜中の教会に忍び込んで 捕まっただよ!」
ふじ「えっ?」
リン「何でも 図書室で本が読みたかっただと。 朝市を誘ったのは ひょっとしたら はなちゃんじゃねえかと 思っただよ。」
回想
ふじ「はな! どうしたでえ? ずぶぬれじゃん!」
はな「本の部屋さ行って… おらだけ 逃げちまって…。」
回想終了