山原高等学校
音楽室
歌子「♬『命かけてと ちかった日から すてきな思い出 残し』」
(戸が開く音)
下地「比嘉歌子。 私 4月から石垣島の学校に移るの。 音楽とは 精神と感覚の世界を結ぶ 媒介のようなものである。 ベートーベンの言葉。」
下地「昔から よく熱出すんですって?」
歌子「はい…。」
下地「運動も苦手 勉強もそこそこ。 おまけに 恥ずかしがり屋で 人前で おどおどしてばかり。」
歌子「はい…。」
下地「これから いろんな人が いろんなことを あなたに言う。 頑張れとか 気合いが足りないとか かわいそうとか。 これまでも これからも。」
歌子「はい…。」
下地「一切 気にせず 感じるままに生きなさい。 みんな 好き勝手なことを言います。 でも あなたの人生は あなたのもの。 あなたは あの日 家族のために 恥ずかしくても 一生懸命に歌いました。」
下地「あなたは もう十分 誰にも負けないぐらい すばらしい人間です。 一つだけ 私も勝手なことを言います。 あなたは いつでも どこでも どうなっても 歌うことをやめては いけません。」
下地「どんな時でもいい。 あなたが その時 歌いたい歌でいい。 あなたは 歌い続ける。 聴く人が たった一人でも。 聴いてるのが 森と虫たちだけだったとしても。 それが あなたの人生。 分かった?」
歌子「はい。」
卒業まで あと半月。 暢子の旅立ちは 5月15日。 沖縄の本土復帰の日に決まりました。