連続テレビ小説「ちむどんどん」73話「ウークイの夜」

比嘉家

歌子「お父ちゃんは 結局 歌手には なれなかったの?」

優子「どうにもならなくて…。 お父ちゃんは 住み込みで うちの食堂の店員になった。」

賢秀「で そのまま結婚?」

優子「ううん。 お父ちゃんは そのうち いなくなってしまったから。」

良子「何で?」

優子「戦争が始まって 召集されて 中国の方に出征していった。」

沖縄料理店・あまゆ

田良島「俺の兄は 19年に入営しましてね。 沖縄で 戦死したんです。 だから どうしても あの『鉄の暴風』のことを 自分で記事にして伝えたかった。」

三郎「俺は 戦後 シベリアに連れていかれました。」

田良島「シベリアですか。」

三郎「何年も 残された家族は 生きてんのか 死んでんのかも分からずね。 苦労かけちまいましたよ。」

多江「いいえ。」

三郎「寒さと飢えの中 シベリアで死んだやつは まだ 骨も 日本に帰れないまま。 いいやつほど 早く死にます。」

比嘉家

優子「お父ちゃんは 戦地でのことを ほとんど話さなかった。 ただ 一度だけ すごく後悔してることがあると言ってた。」

優子「『まくとぅそーけー なんくるないさー』。 自分が正しいと思うことを 守れなかったことを すごく悔やんでいたと思う。 帰ってきたばかりの頃は 夜 寝ている時『ごめんなさい ごめんなさい』と うなされていたからね。」

回想

賢秀「父ちゃん 毎朝 何をお祈りしてるわけ?」

賢三「お願いしたいことと 謝らないといけないことがあるわけさ。」

回想終了

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