比嘉家
優子「房子さんも 陰ながら ずっと援助してくれている。」
暢子「オーナーが?」
優子「あの人も 同じように つらい思いをしてきたから。 房子さんだけじゃない。 善一さんも 毎年 寄付をしてくれている。 善一さんは 本当に 良い人さ。 いつも うちたち家族の味方で いてくれて。 だけど 再婚はしない。」
賢秀「母ちゃん…。」
優子「はぁ…。 フフッ。 ようやく お父ちゃんとの約束が 果たせたさぁ。」
良子「約束?」
優子「いつか 必ず 子供たちに 昔のこと 伝えようって。」
歌子「何で 今まで 話せなかったわけ?」
優子「怖くて たまらなかった。 何年たっても 思い出すと 泣いてしまうから…。 泣いてしまって おかしくなってしまいそうで…。 秀夫のことを 思い出すと…。 この腕の中で 冷たくなった。 うちの腕の中で…。」
優子「自分の食べる分も 弟にあげればよかった。 死なずに済んだかもしれない…。 もっと 遊んだり 働いたり 恋をしたり 泣いたり 笑ったり したかったはず…。 うちだけ こんなして 食べていていいのか 生きていていいのか…。 終わっていないわけ うちの戦争は。 いつまでたっても…。(すすり泣き)」
優子「亡くなった人たちの分まで あんたたちには 幸せになってほしい。 幸せになることを 諦めないでちょうだい。 ずっと そう思っていた。 だから あんたたちには 絶対に 家族を亡くすような思いを させないはずだったのに…。」
優子「賢三さんが 無理していたことに 気付いてあげられなかった…。 ごめんね。 みんなの大好きなお父ちゃん 守ってあげられなくて…。 ごめんなさい…。 ごめんなさい。 ずっと ずっと言えなかった…。 ごめんなさい ごめんなさい…。」
賢秀「それは 違う。」
良子「誰も そんなふうに思ってない。」