こはぐら壮
掃除をしている静子
勝子「奥さん そんなこと 私 やりますから。」
静子「いいんです。 何もしてないと なんか 落ち着かなくて…。」
勝子「そうですか。 …あ 3時になったら ご主人 迎えに行きましょうね。」
静子「お願いします。」
三線に興味を示す和也
恵文「やってみるか?」
和也「え? いいんですか?」
恵文「いいんですよ ほれ…。 はい。 …これ 人さし指 入れてな。」
恵文「はい。 じゃ これを 持たずに上から 弾いて。 ほら 出たな 音が…。」
恵文「はい。 ここ つまんで はい。 うん 変わったな 音が…。」
勝子「あら 『ライ麦畑でつかまえて』? 懐かしいなあ おばさんも読んだ。」
和也「え? そうなんですか?」
勝子「うん 結構 本読むの 好きだった。 成績も 悪くはなかったよ。」
和也「へえ。」
勝子「うちの子は 本とか読まないからね 恵尚も 恵里も恵達も…。」
和也「『ケイショウ』?」
恵文「石垣島の高校 行ってるよ。」
勝子「寮に入ってるさ。 これも 全然 勉強 駄目でねぇ。」
恵文「ハッハッハッハ。」
和也「へえ… 高校か~。」
勝子「具合 どう?」
和也「はい お陰さまで。」
勝子「もうすぐ 着くね お父さん。」
和也「ええ。 あ さっきの話ですけど チョット 分かる気がします。」
勝子「何が?」
和也「なんか この島にいると あんまり 難しい事 くよくよ考えなくてもいいかなと そういう気持ちになるんですよね。」
恵文「そうだねぇ。」
勝子「でも それだけじゃねぇ。」
恵里と恵達が帰宅する
恵里「ただいま~!」
文也「ただいま!」
近くの森
和也「キジムナー?」
恵里「キジムナーが 住んでるかもしれないんだよ。」
和也「何 それ? お化け?」
恵里「お化けとは チョット 違うさ。 悪いものじゃないからね。 子供だよ。」
和也「精霊みたいなもんかな。」
恵里「ああ 先生も そう言ってたさぁ。 『セイレイ』 … 字 分からんけど。」
文也「どういうの?」
和也「妖怪みたいなもんだよ」
文也「やっぱ お化けじゃん。」
恵里「違うよ キジムナーは お化けじゃない こんな大きなガジュマルの木の 穴の中に住んでる 子供さ。 寂しくて 遊びたいだけなんだ。」
和也「へえ。」
恵里「先生 言ってたさぁ イタズラが好きだけど 本当は いい子って…。 私たちの事 ふだんは 守っていてくれる…。」
恵里「先生のね お父さんが 昔 森の中で 迷って 何時間もさまよった時 キジムナーが出てきて コッチコッチって ついていったら 森の出口で 後ろを見たら 誰もいなかったって」
和也「キジムナーねえ…。」
文也「信じるの?」
和也「信じるよ。」
恵里「あっ?」
和也「この鳥 ケガしてるみたいだ。」
鳥を保護しようとしてつまずく和也
文也「兄貴!」
恵里「和也君!」
文也「大丈夫? 兄貴。」
和也「ああ…。」