玄関
恵里「あ!」
恵文「恵里! 恵達!」
恵達「え?」
恵里「どうしたの? お父さん。」
恵文「来ちゃった!」
恵里「は?」
恵達「何だよ? それ。」
恵文「はぁ ここが 恵里の部屋ですか。 結構 きれいにしてるねぇ。 へえ… ドッコイショと!」
恵文「どうしたの? 2人とも。 何 立ってるの? 座りなさい。 久しぶりに お父さんに会ったからって 緊張することないさ。 ハハハハハ。」
恵達「誰が 緊張してるかよ。」
恵里「『どうしたの?』っていうのは こっちのセリフだよ。 そっちこそ どうしたの? お父さん。」
恵文「いや だからね。」
恵里「だから 何?」
恵文「来ちゃった。」
恵達「は?」
恵里「何さ『来ちゃった』って…。 あのさ『来ちゃった』ってのは よく 恋愛ドラマで 主人公の男の人と ヒロインが うまくいきそうな時に 男の人の昔の彼女が 現れた時に 言う言葉さぁ。 『来ちゃった』って」
恵文「そうなの?」
恵達「姉え姉え。」
恵里「何?」
恵文「そんな事は どうでもいいでしょ。」
恵里「エヘン! だから 何しに来たの? お父さんは。」
恵達「そうだよ。」
恵文「『何しに』って 決まってるでしょう 私はね きみたちの親だからさぁ。」
恵里「だから?」
恵文「だから 心配で 様子を見にきた。」
恵里「あ そうか。」
恵文「『あ そうか』じゃないでしょう。 2人して 家出してしまってさ 古波蔵家の平均年齢は ぐ~んと 上がってしまったんだ。」
恵里「そうだよね。 心配かけて ごめんなさい。 でも 何で お父さんの?」
恵文「え? そりゃ ふだんは お母さんや おばぁに 好きにさせてるけど 大事な時は やっぱり お父さんでしょう?」
恵里「そうか そうだよねぇ。 お母さんや おばぁに 任された?」
恵文「もちろんであるさぁ。 ハハハ『ここは ひとつ 古波蔵家を代表して お父さんに ぜひ』ってさ お母さんも おばぁもね。」
恵文「お父さん 『嫌だ』って言ったんだよ けど 『けど 『どうしても』って言うからさ。」
恵里「へえ…。」
みづえ「恵里ちゃん 電話よ! 那覇から!」
恵里「お母さんだ! は~い! 今 行きま~す!」
恵達「どうしたの?」
恵文「いやいや 何でもないさぁ ハハハハ。」
管理人室
恵里「どうも…。」
恵里☎「もしもし? うん 恵里だよ。 ちょっと前に お父さん 着いたよ。 え? 『やっぱり』って… は?」
沖縄
古波蔵家
勝子☎「でもね 恵里 怒らないでね。 お父さん あなたたちのことが 心配で心配で たまらないのよ あなたたちがいないとつまらない。 少し 相手してあげて。 お父さんに お母さんから 伝言 いい?」
東京
一風館
恵里☎「うん。 はい 分かりました。 ん?」
沖縄
古波蔵家
勝子☎「だから 一応 容子さんには近づかないように 注意しといて。 ご迷惑だから ね?」
東京
一風館
恵里☎「うん 分かった。 おやすみなさい。」
恵里「ありがとうございました。」
みづえ「面白い お父様ねぇ。」
恵里「え? もう 伺いました?」
みづえ「ご丁寧に ごあいさつ頂いたわよ。 『娘と息子を よろしくお願いします』って 何度も何度も 頭 下げてらした そしてね 黒砂糖 頂いたの。 おいしいわね。」
恵里「ええ 沖縄は 長寿の島ですから…。 長生きの秘訣ですよ 黒砂糖は。」
みづえ「そうですってね お父様からも お聞きしたわ。」
恵里「そうですか。」
みづえ「そんなに長生きしても どうっていう訳じゃないけどね。」