玄関前
誠「あ 痛い 痛い 痛い…。」
誠「痛い… 流美子。 あのな 流美子… これはよ 俺の 流美子への愛情表現なんだよ。 恵理の事は とても好きだけど それでも 俺は 最後に お前を選んだっていう 愛情表現なんだ。 分かる?」
流美子「分かってるさ。 バカ…。」
誠「すみません。」
居間
恵文「恵理…。」
恵理「何?」
恵文「ありがとう。 その事を話すために 帰ってきてくれたんでしょう?
恵理「え… あ… いや…。」
恵文「ん?」
恵理「いや…。 ううん。」
祥子「私が呼んだんです…。 姉え姉えに来てもらったんです。」
恵達「何で?」
恵理「どうした訳 祥子ちゃん?」
恵達「何 話って… 祥子?」
祥子「…うん。」
勝子「何でも言って いいよ 祥子ちゃん。」
ハナ「そうよ。 勝子さんは 遠慮なんか したことなかったよ。」
勝子「そうだよ…。 おばぁ…。」
ハナ「フッフフフ…。」
恵理「祥子ちゃん。」
祥子「…うん。 あの~。 あの… 私…。 恵達と東京に帰りたいんです。」
恵達「はぁ?!」
恵理「祥子ちゃん…?」
恵達「何で 急に? どうした訳? 帰りたくなった訳… 東京に? 沖縄 嫌になった?」
祥子「ううん。 そうじゃない。 沖縄も このうちも大好き。 ホームシックとかじゃないの。」
恵達「じゃ 何でよ? 何で 東京なわけ?」
祥子「恵達が このままだと ダメになるから…。」
恵達「何か それ? どういう意味よ? 意味 分からんよ。」
祥子「ウソ…。 分かってるくせに…。 だって 私が好きになった恵達と 違うんだもん。 音楽に取り組んでる恵達を 好きになったんだもん。 そりゃ うまくばっかりは いかないの 分かってるし 私には 分からない つらさあると思うけど でも このまま やめちゃうの 嫌なの。」
恵達「そんな事 言ってないだろ。 もう やめれよ!」
恵理「恵達! ちゃんと 話 聞かないと ダメだよ。 座りなさい! 恵達!」
祥子「沖縄に来てから 最初は 順調だったけど 恵達が どんどん 悩んでいくのが 分かった。 でもね 私は 何も 助けてあげられなくて…。 でも 沖縄に居て よかったって 思った。」
祥子「みんな 温かいし 恵達の事 追い込んだりしないし よかったって思ったのね。 恵達が『島袋製作所』で 働くようになったのも 金銭的に 私に負担かけたくないからだというのも 分かった。 でも… 恵達 そこから 変わった。 考えなくなったでしょう… 音楽の事…。 もう いいやって思ってる。」