一風館
中庭
文也「へぇ~ そう言われたんだ」
恵理「うん」
文也「う~ん 俺も そう思うな ていうか もう 別に言うことないじゃん 俺が」
恵理「…あ どう? 文也君のほうは?」
文也「うん 今は 耳鼻科じゃん 人が いないからさ 勉強どころじゃないんだよな ま… それが 勉強っていえば 勉強かも しれないけどさ」
恵理「なるほど」
文也「まだまだだね 俺も…」
恵理「私も…」
容子「あの~ 恵理ちゃん」
恵理「はい?」
容子「もし よかったら ちょっと 真理亜ルームつきあってくれるかな?」
恵理「どうかしました?」
容子「うん…」
文也「…どうぞ」
容子「悪いね」
文也「いえ」
(真理亜のうめき声)
恵理「うわ…」
グアテマラ
真理亜「(うめき声)
中庭
容子「ねえ?」
グアテマラ
容子「どうも」
恵理「どうも どうかしました?」
真理亜「え? なにが?」
恵理「いや… 変な うめき声が聞こえるし」
真理亜「あぁ…」
容子「どうした? なんか つらい事でも あった?」
恵理「仕事ですか? 書けないんですか?」
真理亜「書けるのよ だから…」
恵理「え?」
真理亜「…また 書いちゃったわよ あ~ あ~…」
容子「そうか そういう事か…」
恵理「なんですか?」
容子「うん この人ね… う~ん よく分かんないや 自分で説明しなさい」
真理亜「何なの? それ… いや… だからね こう~ スランプとかじゃないのよ 書けるのね なんか こう~ 中途半端なものが… ま… 大ヒットにも 名作にも ならないけど これも そこそこ 普通に売れるのよ」
恵理「はあ…」
真理亜「でも なんか こう~ つまんなのよ 私は…」
容子「そうなんだって」
恵理「はぁ…」
恵理「ああ…」
真理亜「何よ?」
恵理「そっかぁ 真理亜さんの本か… うん」
容子「恵理ちゃん?」
恵理「うん… あ 真理亜さん」
真理亜「何よ?」
恵理「真理亜さんの本 何冊か もらってっても いいですかね?」
真理亜「え? あ いや… いいけど…」
恵理「あぁ ありがとうございます え~と これと これと…」
真理亜「ちょっと あの… いいんだけどね 今は 私の胸のうちを聞いてさ っていう時間なんじゃないの?」
恵理「これも いいですか?」
真理亜「…どうぞ」
恵理「ありがとうございます じゃ 頂いていきましょうね あ 真理亜さん」
真理亜「え? 頑張りましょうね」
真理亜「あの… だからね『頑張っては いるんだけどさ』って そういう話で…」
容子「もう 居ないよ」
真理亜「なんなの?」
容子「恵理ちゃんに 相談したかったのにね」
真理亜「したくないわよ 別に…」
容子「寂しいね 私で ごめんね」
真理亜「あ~っ」