鈴鹿「ハハハハハッ!」
春子「ビール頂戴!」
種市「はい!」
水口「俺が行く。 大将 悪いんだけど 今日 貸し切りで。」
種市「とっくに そうしてますけど。」
梅頭「こんなムードじゃ握れねえよ。」
水口「タクシー呼んでおこうか。」
種市「あっ はい。 …っていうか 何なんすか あの2人。 何で あんなに ギスギスしてんすか?」
水口「それは 神のみぞ知るだ。 ビール お待たせしました。」
春子「ああ ありがとう。」
鈴鹿「…で 今日は どういった用件で はるばる東京まで?」
春子「ゆうべ 電話したんです。 虫の知らせっていうか 何となく。 そしたら この子 泣いてたんです。『もう帰りたい』って言ったんです。」
鈴鹿「『帰ってらっしゃい』って 言わなかったんですか? 東京から2時間半なんでしょ?」
春子「『帰ってきたら後悔する』って 言いました。」
鈴鹿「あら。」
春子「私が そうだったんですよ。 つまんない ホントに つまんない事で 歌手の道を諦めたんです。 それは ある人に言われた ここで 話題にする気にも ならないほど ささいな ある ひと言が きっかけだったんですけど…。」
回想
荒巻「がっかりだな! 君には プライドってものがないの?」
回想終了
春子「その方の その言葉が私 どうしても許せなかったんです。」
回想
(テーブルをたたく音)
春子「プライドあるから このままじゃ終われないから 今日まで あんたの言う事 聞いてきたんです! バカにしないでよ!」
回想終了
春子「ごめんなさいね。 何の事やら さっぱり分かんないですよね!」
鈴鹿「分かるわ。 誰に 何を言われたか 知らないけど 許せない事ってあるわよ 誰にでも。 要するに あなたは 過去の傷を 引きずってらっしゃるのね。 今も 後悔してらっしゃるのね。」
春子「…全然。」
鈴鹿「あら。」
春子「1㎜も後悔なんかしてません。」
鈴鹿「あら まあ 迷路だわ。」
春子「あそこで見切りをつけたから 結婚して アキが生まれたんです。 むしろ あなたには 感謝してます!」
鈴鹿「私に!?」