鈴鹿「だけど 地元じゃ すごい人気みたいよ お母さんの話だと。」
春子「いえいえ そんな事ないですけど。」
鈴鹿「アイドルなんですって。 お友達と2人で『潮騒のメモリー』歌ってたんでしょ?」
荒巻「フフフフフッ! 知ってますよ。 だって うちは その友達の方を 口説いていたんですから。」
春子「あら 水口さんは ユイちゃんより アキの方が 有望だっておっしゃってますけど。」
水口「どっちも… どっちもです。」
荒巻「とにかく 天野の解雇は…。」
鈴鹿「天野さん クビにするなら 私も辞めますから。」
アキ「じぇ!」
荒巻「辞めるって 鈴鹿さん あんた もう とっくに うちの所属じゃないでしょう。」
鈴鹿「女優を辞めるんです。」
水口「大丈夫ですか?」
鈴鹿「あらら… 平気よ! それより どうなの? 女優 辞めてもいいの!?」
荒巻「辞めろって言っても 辞めないくせに。」
鈴鹿「はい!?」
荒巻「分かりました! 天野の解雇は撤回します。」
アキ「やった!」
荒巻「…。」
アキ「すいません。」
鈴鹿「種市君 お土産。」
荒巻「ほら もう… 漫画の酔っ払いみたいに なってるじゃないですか。 鈴鹿さん?」
鈴鹿「痛っ! 誰 こんな所に!?」
水口「大丈夫ですか?」
荒巻「送っていきます 送っていきます。」
春子「逃げんの?」
荒巻「話があるなら 事務所まで 起こし下さい。 失礼。」
荒巻「鈴鹿さん 大丈夫ですか? 歩けますか? おすし 落とさないようにね。」
春子「(ため息)」
黒川家
『35歳?』。
黒川「あっ 惜しい! 45です。 趣味は 料理かな。 今日も 肉じゃが作ってるの。 彼女? いや いません いません! もう 随分前に別れちゃって…。」
『え~ 嘘~』。」
(チャイム)
黒川「いや ホント ホント! 今は仕事が恋人かな…。」
(チャイム)
黒川「ちょっと待ってね すいません。」
春子「ただいま~!」
黒川「あっ お帰り!」
春子「はあ~ よかった! 鍵 替えられてたら どうしようかと 思っちゃったじゃん!」
黒川「アハハ… えっ 春子さん?」
春子「あっ 誰 このブス。」
黒川「あっ 違う 違う…! な… 何? どうしたの急に。」
春子「その前にさ お風呂いいかな?」
黒川「ちゃんと説明して下さいよ!」
春子「『お帰り』って言ったじゃん 今。」
黒川「『ただいま』って言ったじゃん!」
春子「うわ~ 何か ムカッと来るな…。 何よ カーテンの色 ちょっと明るくしちゃってさ。 モテようとしてんの? うわっ 関節照明! ウケる! 独身か!?」
黒川「独身だよ! 僕の部屋だろ! 僕の部屋を 僕が どうしようが 僕の勝手だ!」
春子「しばらく 厄介になります。 すいません。」
黒川「ねえ ちょっと!」
春子「ついてこないでよ。 お風呂 入るんだから。」
黒川「何だよ。」
アキ「何でもねえ。」