連続テレビ小説「あまちゃん」109回「おらのハート、再点火」

スリーJプロダクション

<という訳で 天野アキの 記念すべき初仕事は…>

アキ「副駅長の吉田さん 観光協会の栗原ちゃん ご結婚おめでとうございます! スリーJプロダクションの天野アキです!」

春子「もっと笑顔で。」

アキ「はい! 本当は そちらに お伺いしたかったんですが…。」

春子「そういうのは 残念そうに言わなきゃさ。」

春子「ちょ ちょ… どこ行くの?」

黒川「仕事ですよ。」

アキ「おらも バイトなんだけど。」

春子「バイトとか言わないでよ タレントなんだからさ。 営業って言いなさい。 黒川さんも外回りって言いなさい。」

黒川「黒川さん?」

春子「ホワイトボードに『黒川 外回り』って書きなさい。」

黒川「どこまでも 会社に こだわるんだね。」

春子「だって 楽しいんだもん。 専業主婦が いきなり社長だよ? たまんないよね~!」

黒川「社長! 晩御飯は どうします?」

春子「要らない。 面接だから。」

アキ「面接?」

春子「現場マネージャー雇おうと思って。 アキも立ち会ってよ。」

純喫茶・アイドル

テレビ・GMT5♬『駅前 コンビニ 駐車場 地元』

<私の声だ…。 でも歌っているのは 見た事もない ハーフの女の子>

甲斐「ベロニカ 熱いよね…。 山梨とブラジルのハーフなんだってさ。 地元の概念を変えたよね。」

<本当は おらが歌ってるのに>

春子「では 追って連絡させて頂きます。」

「はい。」

春子「ありがとうございました。」

「よろしくお願いします…。」

春子「はい。」

(ドアベル)

春子「(ため息)覇気がないのよね。 どいつも こいつも いい大学 出てるくせにさ。」

アキ「あの~…。」

春子「何? 今の気に入った?」

春子「駄目よ。」

アキ「…だよね。 覇気がねえもんな。」

春子「いや そうじゃなくて… いや それもあるけど。」

テレビ・よしえ『太巻プロデュース! アメ女の妹分! 地元系アイドル GMT5!』。

春子「すごいわねえ GMT5。 これだけ スポット打つのに 宣伝費 いくら かかってんでしょうね。 チャンネル 替えて下さい。 1万枚売んなきゃ 解散なんでしょ? 油売ってていいの?」

水口「10万枚です。」

春子「え?」

水口「予算も 10倍になりました。 だから 俺なんか もう用なしなんです。」

アキ「水口さん…。」

水口「このままじゃ悔しいっす。 太巻の奴 一緒に見返してやりましょう。 俺じゃ駄目っすか? マネージャー。」

春子「駄目よ。」

アキ「ママ なして?」

春子「確かに うちと あんたは 同じ敵と戦ってる。 でも 今 手ぇ組んだら こっちが 引き抜いた事に なっちゃうじゃん。 あんな執念深くて ちっちゃくてさ 無駄に権力持ってる男 敵に回したら この業界じゃ やっていけない。 簡単に潰されます。」

水口「分かりました。」

春子「ごめんね。」

水口「電話一本かけていいっすか? 男として 筋通しますんで。」

春子「ちょ… ちょっと待って 誰にかけんの? ちょっと やめてよ。 ちょっと やめてくれる? ちょっと待って。 やめて。」

水口「もしもし 水口です。 ユイちゃん 今 大丈夫?」

北三陸駅

ユイ「あっ はい。」

純喫茶・アイドル

アキ「ユイちゃん?」

水口「ごめん 君との約束 果たせなかった。」

北三陸駅

ユイ「え?」

純喫茶・アイドル

水口「会社 辞める事にした。 ごめん。 太巻さん 裏切って 春子さんが 新しく作った事務所で アキちゃんのマネージャーやる事にした。 ごめんね。 もともとは 君を 太巻さんに引き合わせて デビューさせる事が目的だったのに こんな事になっちゃって…。 ホント 申し訳ない。」

北三陸駅

ユイ「いいです そんな…。」

電話・水口『よくないでしょ? だって これで 完全に 君の夢が 断たれてしまったんだから。』

ユイ「いいんです。 とっくに諦めてるから。 それより アキちゃんの事 よろしくお願いします。」

純喫茶・アイドル

水口「僕は諦めてないよ! 絶対いつか デビューさせる。」

北三陸駅

電話・水口『アキちゃんと2人で また【潮騒のメモリー】歌ってもらうから。』

純喫茶・アイドル

水口「お座敷列車で。 いや…。 何なら 満員電車で歌ってもらうから そん時は頼むよ!」

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