アキ「『おめでとう』は?」
大吉「何?」
アキ「今日 おら 潜水士の資格試験 受がったんですけど! まだ 誰にも おめでとう 言われてないんですけど!」
ヒロシ「おめでとう。」
アキ「遅い!」
ヒロシ「ごめん。」
大吉「誰にも言われてねがったのか。」
アキ「誰にも言われてねがった!」
春子「種市君にも~?」
アキ「エヘヘ~。」
春子「言われてんじゃん!」
アキ「メールも来ました!」
大吉 吉田「お~い。」
吉田「あれ あれ? どうした? 足立家の温度差が すさまじいな。」
ヒロシ「お構いなく。」
アキ「ごめん ごめん 歌だよね。 この間 ママが歌ったの 何ていう歌だっけ?」
春子「え?」
アキ「『潮騒のメモリー』だ。 あれがいい。」
春子「入ってんの?」
アキ「ユイちゃんちのパソコンでダウンロードした。」
ユイ「ネットで見つけたんです。 映画の主題歌だったんですね。」
大吉「んだ んだ。 俺が もう 北鉄の社員だったから 20年ぐらい前か。 あれ 主役 誰だっけ?」
春子「…鈴鹿ひろ美。」
ヒロシ「えっ あの!」
大吉「あれ 確か 海女さんの映画だよな。」
吉田「まだ 高校生でしたね。 見に行ったな 盛岡まで。」
ヒロシ「主題歌は誰が歌ってるんですか?」
春子「鈴鹿ひろ美!」
ヒロシ「えっ あの!」
春子「うん。」
<『あの!』って言われても 『どの?』って感じでしょうが このポスターを見れば 『ああ あの!』と思うでしょう。 清純は女優として 華々しく デビューして四半世紀 今や 日本を代表する実力派女優 あの鈴鹿ひろ美です>
ヒロシ「あの人 歌なんか 出してたんですか。 へえ~。」
大吉「デビュー曲だ。 家に レコード あんだけどな。」
吉田「見でえな『潮騒のメモリー』 久しぶりに。」
アキ「DVDになってねえの?」
春子「なってない。 …っていうか あんた歌えんの?」
アキ「えっ?」
春子「あれ 難しいよ マジで。 あんたの歌なんて 小学校の学芸会以来 聴いた事ないんですけど。」
ヒロシ「マジで?」
吉田「それ 合唱だよね。」
春子「うん。 ほとんど聞こえなかった。 …っていうか 口すら開けてなかったもんね。」
吉田「やっばい やばい。 これ期待しちゃいけねえパターンだな。」
アキ「歌えるもん!」
<…と 強がってみせた アキですが 春子の言うとおり 人前で歌った事など一度もなく カラオケも ほぼ初体験>
アキ「あ~ あ~ テスト テスト。 あ~。」
(拍手)
アキ♬『来てよ その火を 飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー』
<何とも言えません>