連続テレビ小説「あまちゃん」78回「おら、奈落に落ちる」

アキ「ここで 働ぐのかあ。」

伊東「タクシー到着しました。」

女客「ありがとう。」

しおり「じゃ アキは?」

アキ「え?」

しおり「聞いてねえの?」

喜屋武「『好きな女優 誰ね?』って。」

アキ「ああ 鈴鹿(すずか)ひろ美(み)。」

一同「え~!」

アキ「え 駄目?」

しおり「いや お芝居は うまいと思うよ ただ 何か鼻につかない?」

アユミ「いい噂 聞かんもんな。 新人泣かしたとかさ。」

しおり「お城に 住んでそうじゃない?」

アキ「おらも よく知らねえけど テレビで 昔の映画見て。」

アユミ「映画いっぱい出てるもんな。」

女客「ごちそうさま!」

アユミ「もともと アイドルだったんでしょ? それから トントントンみたいな。」

小野寺「誰?」

しおり「知らないの?」

真奈「時代劇とか よう出よんしゃる 有名な大女優さんみたい。」

しおり「私 あっちの方が好きだな あの 冷蔵庫のCMとか出てる。」

アユミ「あ~! 何だっけ?」

アキ「じぇじぇじぇじぇ! じぇじぇじぇじぇじぇ~!」

水口「すいません。」

伊東「はい。」

水口「今 大体いくらぐらい?」

梅頭(うめず)「支払い 済んでるから。」

水口「え?」

伊東「さっきまで お隣にいらした お客様が 払われましたよ。」

<ユイちゃん これは 事件です 大事件です。 憧れの女優 鈴鹿ひろ美が ついたて1枚隔てた 隣の席にいたなんて>

しおり「アキ!」

水口「どこ行くんだ?」

道中

アキ「あの 鈴鹿さん!」

鈴鹿「はいは~い!」

アキ「あの…。」

水口「おい 天野!」

アキ「あの…。」

水口「鈴鹿さん いらしてたんですね。」

鈴鹿「あなた確か 太巻(ふとまき)んとこの…。 え~と。」

水口「水口です。」

鈴鹿「水口さん ハハ! 水口さん。」

水口「今日は どうも ごちそうさまでした。」

アキ「ごちそうさまでした!」

鈴鹿「嫌だ もう そんな。 お構いなく。」

一同「ごちそうさまでした!」

鈴鹿「大げさ! 今日は 気分がよくて 楽しかったから。」

「鈴鹿さん!」

一同「ごちそうさまでした!」

鈴鹿「え? やだ え?」

伊東「あ あの 皆様の分も 全部払ってと おっしゃったので。」

鈴鹿「お構いなく。 ほっとけないだけなの。 私も 皆さんの年頃から この世界でやってますから。 鼻につくとか 言われながらね。」

しおり「すいません!」

水口「すいません 世間知らずなんですよ。 地方出身者ばかりを集めた アイドルグループで よろしければ ご挨拶させて頂いても。」

鈴鹿「そうね ここで お会いしたのも 何かのご縁ですから。 お名前くらい 伺っておこうかしら。」

しおり「はい! 海はないけど 夢は… ある!」

鈴鹿「結構です! 人目もあるし。 さて お城に帰りましょ。」

水口「ありがとうございました。」

一同「ありがとうございました。」

アキ「握手! 握手。」

水口「こらこらこら! 何やってんだよ。」

アキ「ファンです! あんださ 憧れて 東京さ来ました!」

水口「おい! 天野。」

アキ「『潮騒のメモリー』最高です 最高です!」

鈴鹿「ありがとう。 いつか一緒に お芝居しましょうね。」

水口「すいません。」

アキ「かっけえ~!」

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