連続テレビ小説「あまちゃん」79回「おら、大女優の付き人になる」

安部そば

安部「(くしゃみ)なんとかしてやりでえな。」

アキ「だけど 頑張れなんて言いだぐねえし 言える立場じゃねえ。 おらも まだ どうにもなってねえがら。」

種市「すいません。」

安部「いらっしゃい!」

アキ「そばですか? うどんですか?」

種市「自分 まめぶ大盛り。」

アキ「じぇじぇじぇじぇ!」

種市「おう。」

安部「えっ やんだ 知り合い!?」

種市「東京来たんなら 連絡よこせよ。 水くせえな。」

アキ「いや すぐ連絡したら 負けっつうか まだ 恋愛感情あると思われても 癪(しゃく)だから。」

種市「面倒くせえ奴(やつ)だな。」

アキ「じぇ。 懐かしいな先輩。 絵葉書 届きましたよ。 羽田空港の拡張工事 始まったんですよね。」

種市「…ああ。」

アキ「南部ダイバー魂は健在ですか?」

種市「…うん。」

アキ「すげえな。 潜水土木の花形だもんな。」

種市「どっかで 飯でも食うか? 天野。」

安部「じぇ! 今 まめぶ入れちまったべ。」

種市「うまいもん食おうぜ。 おごるよ 一応 社会人だし。」

安部「まめぶは うまいもんじゃないっつうの? まめぶの立場は どうなるの?」

種市「遠慮しないで何でも好きなもの…。」

アキ「おすし!」

安部「…アキちゃん?」

アキ「じゃあ また来るね!」

安部「アキちゃん!」

無頼鮨

種市「ユイから連絡あった?」

アキ「最近は…。 先輩は?」

種市「父ちゃんの病気の事も 磯野先生から聞いた。」

アキ「でも 留守電 入れたら メールは返ってきます。 随分 回復して リハビリの成果も出てるって。」

種市「これ 相当 無理してるじゃん…。」

アキ「じぇ?」

種市「『もう大丈夫。 ぜんぜん大丈夫。 大丈夫だよ。 まだ大丈夫』って…。『大丈夫』って 4回も打つなんて 大丈夫じゃない証拠だよ。」

アキ「ああ…。」

種市「まあ 天野のは弱いところ みせたくねえんだろうな。 なんとかしてやりてえけど…。」

アキ「いいな ユイちゃんは…。」

種市「うん? 何が いいんだよ。」

アキ「みんなに気にかけてもらえて。 こっちさ来てから ユイちゃんの事ばっかり 聞かれんだ。 事務所さ行ったら…。」

回想

河島「かわいい方?」

水口「いえ なまってる方です。」

警備員「かわいい方?」

水口「なまってる方。」

しおり「かわいい方は?」

水口「来ない。」

回想終了

アキ「分かってても さすがに へこむわ。 安部ちゃんも 先輩も 案の定『ユイちゃんは?』って…。」

種市「いや 俺は ほら まだ 一応 つきあってっからさ。」

アキ「ひがんでる訳でねえんだ。 やっぱ すげえなって。 いねえ所で 話題に上るって事はよ みんなの心の中さ ユイちゃんが いるって事だべ?」

アキ「うまぐ言えねえけど それが スターの条件っつうか 華っつかよ やっぱ ユイちゃんは 表舞台に 立つべき人間なんだなって つくづく思う。 また つきあってんのか…。」

種市「うん? えっ?」

アキ「そうか そうか 遠距離恋愛続行中か。 先輩も なまってる方でねなくて かわいい方が来れば よかったのにって 思ってる口だな? そうかい そうかい 何か すいませんした。」

種市「別に そんな事 言ってねえじゃん。」

アキ「『言ってねえじゃん』? はあ~ いつの間にやら 標準語か。 かっこいいな!『俺って 南部ダイバーじゃん!』。」

種市「ちょ… 天野! 聞いてくれ  天野。 俺 実は…。」

アキ「えっ まさか…。 えっ ユイちゃんと別れるのか?」

種市「いや そんな予定は ねえ。 遠距離恋愛バリバリだ。」

アキ「何だよ…。 俺 もう 何なんですか?」

種市「俺 もう 南部ダイバーじゃねえんだ。 仕事 辞めた。 会社の寮も出た。 ユイの事も心配だし 来週にも田舎さ帰ろうと思ってる。」

アキ「な… 何で?」

種市「うちの親会社が今 力入れてる計画が 2つある。 一つは 羽田空港滑走路拡張工事。 もう一つが 東京スカイツリーだ。 羽田の工事の着工が 予定より遅れて どういう訳か スカイツリーの方に回された。」

アキ「潜水土木科なのに…。」

種市「全然 関係ねえ。 南部ダイバー魂 見せようがねえんだ。 しかも 高(たけ)え所が苦手らしく…。」

アキ「じぇじぇ!」

種市「高所恐怖症らしく…。」

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