連続テレビ小説「あまちゃん」93回「おらのママに歴史あり 2」

天野家
作業場

アキ「何してんの?」

忠兵衛「おう アキか。 タコ生け捕りにする 仕掛け作ってんだ。」

アキ「じいちゃんはさ 漁さ出たぐねえなって 思った事ねえの?」

忠兵衛「あ?」

アキ「行ったら 1年も行きっ放しでしょ?『やんだな 行きだぐねえな』って 思わねえの?」

忠兵衛「まさに 今が そうだべ。」

アキ「あっ そういえば 去年も行ぐだの 行がないだの 大騒ぎしてたな。」

忠兵衛「昨日も漁協の組合長が来て『イカ釣り船の人手が足んねえから 乗ってけろ』って頼まれたが『人数合わせは ごめんだ』つって 断った。 今 激しく後悔してる。 アキもか?」

アキ「んだ。 海女カフェで バイトしてんのも 現実逃避だ。

忠兵衛「おらも現実逃避中だ。 今の季節 タコなんか いねえし。」

アキ「現実は つれえなあ…。」

忠兵衛「お互いにな。 行けば行ったで なんとかなるんだが う~ん 行くまでが つれええ。」

(ドアが開く)

アキ「じぇ!」

水口「なぜ… なぜ出ない 電話に 君は。」

アキ「え?」

水口「出て 電話に! 出なかったら すぐ折り返して!」

アキ「すんません。」

水口「頼むよ ホント。」

アキ「えっ? そのために わざわざ 東京から来たんですか?」

水口「いや 明けましておめでとう。」

アキ「おめでとう。」

水口「おじいちゃんも 今年も よろしくお願いします。」

忠兵衛「おう。」

水口「いつまで いるの?」

アキ「分がんねえ。」

水口「みんあ待ってるよ。」

アキ「おらの代わりなんて いくらでも いるべ。」

水口「何ですか?」

長内「いや 急ぐ用事じゃねえから。」

水口「気になるから。」

長内「あっ そうすか? それじゃあ…。 忠兵衛さんよ いつまで 陸(おか)さ いるつもりだ!」

忠兵衛「分がんねえ。」

長内「そろそろ 船さ乗ってもらわねえと 若(わけ)えもんから 文句が出る!」

忠兵衛「おらの代わりなんぞ なんぼでもいるべ!」

水口「バカな事 言ってんじゃないよ!」

忠兵衛「あっ すいません。」

水口「あっ いや すいません。 アキちゃんね GMTには 君の力が必要なんだよ。」

アキ「嘘(うそ)だ。 頭数さえ そろえば いいと思ってるくせに。」

水口「そんな事…。」

長内「思ってねえよ! 忠兵衛さんよ!」

水口「うるさいな…。 こっち先に済ませていいですか?」

長内「はいはい。」

アキ「わざわざ来たんだから おらじゃなくて ユイちゃん連れてったら どうだ。」

水口「え?」

アキ「かわいい方が目当てなんだべ。 だったら かわいい方 連れてって かわいくプロデュースすればいい!」

水口「留守電 聞いてないの? 君。」

アキ「留守電?」

水口「マネージャーからの電話に出ない 折り返さない 留守電 聞かない タレント失格!」

アキ「…すいません。」

水口「すいませんじゃなくて 早く聞いて。 今 聞いて 今。」

長内「直接 しゃべったらいいべ。」

水口「やだ。 もう一回 同じ事なんて言えない 昨日のテンション 到底持っていけないし。 ほら 早く聞いて。」

留守電『メッセージは 16件です』。

アキ「じぇじぇ!」

留守電(『ピ~ッ』という音)

回想

水口「もしもし 天野? 水口です。 今は 1月7日の夜です。 一回しか言わないから ちゃんと聞いてくれ。 ここ数日 君の事を考えてる。 正確には 君のいない GMTの未来を考えて 激しく落ち込んでる。 俺は ずっと ユイちゃん派というか ユイちゃんを センターに抜てきしようとしてきた。 でも そ…。」

留守電(『ピ~ッ』という音)

回想終了

水口「そんな見るなよ。」

留守電・水口『もしもし 水口です。 さっきの続き。 そんな逆風の中で 君は…』。

回想

水口「4か月かけて 自分の立ち位置を獲得した。 もう君は ユイちゃんの相方じゃないよ。 GMTの天野アキだ。 なまってるけど 40位だけど 最下位だけど それが…。」

(『ピ~ッ』という音)

水口「それが どうした! 水口です。 それが どうした。 誰が 何と言おうと 君の代わりは 君しか いないんだよ。 そんな君を売り出す事が マネージャーとして 僕の…。」

(『ピ~ッ』という音)

回想終了

留守電・水口『水口です。 入間(いるま)に代わります』。

アキ「え?」

(『ピ~ッ』という音)

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