コロンブスレコード
鉄男「何か… みんな いけすかねえな。」
裕一「ちょっと…。」
裕一「あ~ 廿日市さん!お忙しいところ すみません。」
廿日市「で 誰を紹介したいって?」
裕一「はい え~っと…。」
廿日市「君さ~ どの面下げて そんなこと言ってんのかな~? 君みたいな不良債権抱えて どうやって面倒見るのよ。」
廿日市「『福島行進曲』だって 結局 ちっとも売れないしさ。」
裕一「す… すみません…。」
廿日市「あの作詞家 どっから連れてきたの? こっちは 素人の 思い出作りにつきあってる暇ないんだよ。」
裕一「廿日市さん あの あの…。」
廿日市「あの歌詞 全然 意味分かんないしさ。 『トランプ』って何?」
裕一「えっ? ト…トランプ…。」
廿日市「『福ビル』? さっぱり分かんない。」
裕一「あっ 福ビルって…。」
廿日市「作詞家の仕事をなめてんじゃないかな?」
裕一「いやいや そんなことない…。」
鉄男「じゃあ あんた 詞 書いたことあんのか?」
廿日市「ああ?」
裕一「あの えっと… 村野鉄男君 あの…『福島行進曲』の…。」
廿日市「あ~ 君がトランプ君か。」
鉄男「あんた 福島 バカにしてんのか!?」
廿日市「してねえよ。 地方小唄なんだから もっと分かりやすい言葉で 作ってくれって話じゃねえか。」
鉄男「あんたが分かっかどうかなんて関係ねえ! 歌は聴いてくれた人のもんだ。」
廿日市「ハハハハハ… ハハハハ…。 君 一体 何 1人前なこと言ってんの? ハハハハハ…。」
その場を後にする廿日市
鉄男「何だ… おい!」
裕一「ちょちょ… あの人ね ああいう人だから。 もう曲の善しあしよりも売れないものには 価値がないっていう考え方なんだよ。 あ~もう…。」
木枯「裕一…。」
裕一「あら? 木枯君 ハハ…。」
鉄男「木枯って あの木枯さん?」
裕一「うん。」
鉄男「えっ!? あっ… 村野鉄男です。 ハハハ… どうも。」
木枯「ちょうどよかった 話があったんだよ。」
裕一「うん!」
おでん屋
裕一「うん! うん! 大根おいしい うん!」
鉄男「だべ? ここ 最高にうめえんだ。」
裕一「うん!」
木枯「つみれも いける。」
鉄男「でも驚いたよ。 裕一が 木枯さんと知り合いだったなんて。 『酒は涙か溜息か』 大好きです。 レコードも買いました。」
木枯「あっ ありがとうございます。 『福島行進曲』もよかったです。」
鉄男「えっ!? 聴いてくれたんですか?」
木枯「いい歌詞ですよね~。 しみました。」
鉄男「ありがとうございます!」
裕一「ほらね 分かる人には分かるんだよ。 さっき 廿日市さんに悪口言われたの。
木枯「ああ… あいつは金のことしか 頭にないから 気にしなくていいですよ。」
裕一「うん うん! あっ… 話って何?」
木枯「あ~…」
裕一「うん。」
木枯「実は…。 移籍することのなった。」
裕一「い… 移籍?」
木枯「テイコクレコードに誘ってもらったんだ。」
裕一「ふ~ん。 そ… そうなんだ…。」
鉄男「テイコク… いいですね。」
裕一「ねっ! うん。」
鉄男「あの… もし ご迷惑でなければ 今度 詞 見て頂けませんか?」
木枯「もちろん いつでも。」
鉄男「あっ… やった。」
裕一「やっぱ… やっぱ 木枯君 すごいな。 いや 僕 何やってんだ。」
木枯「心配無用。 いずれ必ず 君は コロンブスを背負う作曲家になるよ。」
鉄男「おおっ…。」
裕一「だと いいんだけどね。」
帰りの道中
木枯「鉄男君 いいやつだな。」
裕一「うん!」
木枯「羨ましい。」
裕一「えっ?」
木枯「俺 友達いないから。」
裕一「僕 木枯君のこと 友達って思ってるよ。」
木枯「サンキュー。」
裕一「あっ テイコク行っても たまに会おうね。」
木枯「ああ。」
裕一「うん。」
木枯「あっ そうだ。 もう1つ 話があったんだ。」
裕一「うん。」