古山家
音「わあ… 羊羹なんてぜいたく!」
鉄男「取材先でもらったから お裾分けに。」
華「うわ~! ありがとう 鉄男おじさん! お母さん 今すぐ食べていい?」
音「お父さんの分も残しておくのよ。」
華「うん 分かってる。」
音「ありがとうございます。」
鉄男「いえ…。 音さん… ちっといい? 大本営の発表と現実は違う 日本は負け続けてる。」
音「そんなに悪いんですか?」
鉄男「同盟国のドイツも旗色が悪い。」
音「そう…。」
鉄男「取材中のうわさ話なんだけど 激戦地への慰問 裕一が候補に挙がってるらしい。 頼まれたら期待に応えようとしちまう 性格だから 要請来たら 行くんじゃねえかと思って。 優しさって… 時に命取りになっから。」
予科練
濱名「古山先生。」
裕一「あっ 中佐。 本当にありがとうございました。」
濱名「実は 2曲目の方が 圧倒的に好きだったもので。 私利私欲も入ってます。」
裕一「もしかして音楽をされていたんですか?」
濱名「いえ… ただ 懐かしくなって ここの初期の練習生が卒業する時に 私は『愛染かつら』の…。」
濱名「 ♬『花も嵐も 踏み越えて 行くが男の 生きる道』あの一節を歌い『若いお前たちには 花のような まだ見果てぬ夢があるだろう。 また行く手には 恐怖をそそる嵐もあるだろう。 だが それを勇敢に踏み越えて進むのが 日本男児の道だ』と言葉を贈りました。 その中に 爆弾小僧とあだ名された 田丸という暴れん坊がいたんです。」
裕一「すごいあだ名ですね。」
濱名「フフフ…。 勇猛果敢なやつでした。 炎で燃え上がる飛行機を田丸は操縦し続け 敵艦に体当たりして 大きな戦果をあげました。きっと田丸は あの歌を心に刻んで 立派に戦ったんです。 先生… 歌には 人の心を奮い立たせる力があります。 何百万人の心を一つにする力があります。 どうか これからも 命を賭して生きる 若者のために よろしくお願いします。」
裕一「はい!」