飛行兵に憧れて 国のために 命懸けで戦う覚悟を決めた練習生たちは 厳しい訓練を耐え抜いていました。 体力錬成運動 軍事教練 機械や通信 英語の教育など 訓練は多岐にわたりました。 訓練の合間には つかの間の自由な時間もありました。 ふだんの彼らは まだ幼さが残る少年でした。
「強い! ああ…。」
「えいっ えいっ!」
「こんにちは!」
裕一「こんにちは。」
「こんにちは!」
裕一「あっ こんにちは。」
裕一「どうしたの? こんにちは。」
風間「あっ はい! こんにちは。」
裕一「ど… どうかした? あっ… ごめんなさい。 座って下さい。 すいません。 今ね 頑張ってさ 曲作ってるんだけど 全然思い浮かばなくてさ。 よかったらでいいんだけど あの… 話 聞かせてもらえないかな? 朝から晩まで みっちりだもんね。 僕なんか体力ないから すぐ へばっちゃう。」
風間「体力的なものは すぐに慣れます。」
裕一「うん? じゃあ… 何?」
楽曲披露当日
「1 2 1 2!」
「そ~れ!」
「1 2 1 2!」
「そ~れ!」
三隅「おはようござい… ます…。」
「1 2 3 4! 1 2 3 4!」
三隅「先生!? 先生 まさか… 書けなかったんじゃ?」
裕一「おはようございます。(あくび)」
三隅「うん? ああっ あっ…。」
三隅「よかった! はあ… 無駄になるかと思った。 では遅くまで頑張られたのですね。 お疲れさまです。」
裕一「いえいえ… ある練習生の話 聞いたら 喉の骨が こう ポイッと取れて 5分くらいで書けました。」
三隅「アハハ… 才能って嫌い。」
裕一「どう思います? その曲。」
三隅「へっ? そ… そうですね…。」
この人 全く楽譜は読めません。
三隅「1曲目とは… 正反対のところが面白い!」
裕一「伝わりましたか~! よかった~!」
偶然でした。 こういうツイてる人 います。
裕一「単調だけど 悲しくない旋律に 苦労したんですよ。」
三隅「なるほど。」
裕一「勇気の源にある愛を 表現できたんじゃないかなと思います。」
三隅「全く同感です!」
裕一「それで練習生の方の件はどうなりました?」
三隅「手抜かりはありません。 教官では反対されると思い その上の副長の濱名中佐に 直談判しました。 この人 話が分かる方でして…。」
裕一「何から何まで 本当にすみません。」
三隅「ただ 先生…。」
裕一「はい。」
三隅「皆さんが選んだ曲が『若鷲の歌』になるんですから 思い入れがるからって『こっち!』は なしですよ。 いいですね?」
裕一「はい。」
『若鷲の歌』を 教官たちの前で披露しました。 1曲目は 高揚感のある明るい曲。 2曲目は 裕一が予科練に来てから作った 単調の曲でした。
(拍手)
三隅「え~ 今のが2曲目 単調のものでした。 では 挙手をお願いします。 1曲目がよいと思われた方。」
三隅「あっ… まあ 分かりやすいですからね。」
濱名「待て。 せっかくだ。 練習生の意見も聞いてみないか?『若鷲の歌』は彼らの歌であり 彼らが歌うんだから。 ねえ? 三隅さん。」
三隅「ええ!」
「濱名中佐 お言葉ですが 映画の主題歌とはいえ 予科練の歌です。 指導する我々が決めた方がよいかと。」
濱名「まあ そう固いこと言うな。 私は聞いてみたい。 別に 皆を集める必要はない。 なっ いいだろう?」
「あっ…。」