連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第113話「鬼太郎ブームがはじまった」

深沢「成田出版との合併話 随分 喜んでましたからね。 がっかりしたんでしょうな。 彼女には 苦労のかけどおしでしたから。 それで ついね…。」

回想

客1「大学生が 漫画 読むとは 嘆かわしい風潮だよ! まともな出版社が 漫画を出すなんてのは 先進国の中でも日本ぐらいだろ?」

客3「僕もね 漫画は読むな バカになるぞって 子供に言ってるんですがね。」

マスター「すいません。」

客1「こらからの日本を しょって立つのは 君達や君達の子供達なんだよ!」

マスター「お客さん! 漫画関係の方が いらっしゃいますので…。」

客3「ほう。」

客1「たかが漫画に そうそう 目くじら立てる事もないか。」

客3「しょせん 金もうけ目当ての オモチャ雑誌だ!」

(客達の笑い声)

深沢「もう一遍 言ってみな!」

客1「何?」

深沢「今 たかが漫画と言ったな!」

客2「何だよ あんた。」

深沢「たかが漫画でも 命 懸けてる人間もいるんだ。 あんたら! それ 分かって 言ってるのか? え?」

客2「あっち 行けよ!」

客3「何すんだ お前!」

回想終了

深沢「水木さん 私 本当は 少し 惜しい事をしたと 思ってるんですよ。 せっかくの うまい話 意地を張って 断ってしまって。 あげくに 大事な相棒にも とうとう 愛想を尽かされてしまった。」

布美枝「引き止めなかったんですか? 引き止めたら 郁子さん もしかして…。」

深沢「『ゼタ』には 彼女の気持ちを満たすものは もう なかったんです。 はあ~ バカな事をしたもんですよ。 大事な人を失うと 分かっていながら 意地を張って。」

茂「しかし その意地っ張りが 『ゼタ』を 作ってきたんですからなあ。 金さえかければ 幾らでも いい雑誌が 作れそうなもんですが 実際は そうはならんのです。」

茂「現に『ゼタ』のような雑誌は 他の金持ち出版社からは 一つも出とらん。 原稿料が安くとも 『ゼタ』を愛する者は大勢おります。 深沢さんがおるかぎり 自分は 『ゼタ』に描き続けます。 それは 変わらんですよ。」

深沢「水木さん…。」

2階

いずみ「郁子さんって 案外 冷たいんだね。 こげな時に 深沢さんを見捨てて 出ていくなんて…。 すてきな人だと思っとったけど 幻滅したな。」

布美枝「そげかなあ。」

いずみ「え?」

布美枝「郁子さん 深沢さんが 結核で入院しておられる頃から 『ゼタ』を手伝ってて 資金繰りも 広告集めも 何でも やっておられたんだよ。 郁子さんがいたから 深沢さんは 『ゼタ』を続けられたんだわ。」

いずみ「ほんなら なして今になって それを捨てるの?」

布美枝「仕事をして 生きていく人だけん。 きっと 大事なものを捨ててでも やりたい事があったんだわ。」

いずみ「私には 分からんわ…。」

布美枝「私にも よう分からん。 けど それだけの覚悟をして 仕事をしておられたんじゃないのかな。 郁子さんも 深沢さんの事 お好きだったんじゃないだろうか。 お二人とも…。 つらい思いされただろうな…。」

いずみ「姉ちゃん…。」

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