連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第112話「鬼太郎ブームがはじまった」

布美枝(松下奈緒)は浦木(杉浦太陽)から「嵐星社がほかの出版社と合併するらしい」と聞き、忙しい茂(向井理)との会話不足のために“そんな大事なことも知らずにいたのか”と思う。茂は倉田(窪田正孝)に“漫画家としてやっていくための心構え”を語り、布美枝といずみ(朝倉えりか)は“漫画を描いて生きていくことの大変さ”をあらためて感じる。「墓場の鬼太郎」の主題歌が茂の作詞によって完成し、それをきっかけに…。

112ネタバレ

水木家

客間

浦木「中森も 手土産なんぞを 持ってきたところを見ると 幾らか 人間らしい暮らしが できとるようですな。」

布美枝「あの…」

浦木「え?」

布美枝「それより 浦木さん 『ゼタ』が大変な事に なっとるっていうのは…。」

浦木「あ それなんですがね あの貧乏雑誌の『ゼタ』が 成田出版と 合併するという噂があるんです。」

布美枝「合併…?」

浦木「『ゼタ』を買い取って 自分とこの雑誌として 販売するんです。」

いずみ「成田出版って 有名な会社ですよね。」

浦木「雄玄社と並ぶ 業界最大手です。」

布美枝「ほんなら 深沢さんは どうなるんでしょう?」

浦木「成田出版に迎えられて 『ゼタ』の 編集長に 納まるらしいですよ。 あの男 うまい事 やりやがったなあ!」

布美枝「嵐星社は やめてしますんですか?」

浦木「やめるも何も あんな オンボロ会社 はなから存在しないも同然ですよ。」

布美枝「まあ…。」

浦木「今どき 原稿料が ページ800円! 子供の小遣いじゃ あるまいし。」

いずみ「けど 大学生や何かにも 人気が あるんでしょう?」

浦木「まあ 貧乏出版のわりには 名が 売れとるから 成田出版も 看板に価値ありと 見たんでしょうな。」

布美枝「ちっとも知らんだった…。」

浦木「まあ 深沢が よほどのバカでない限り こんな いい話 けるはずがない。 大手ともなれば 製作費も広告宣伝費も 『ゼタ』とは けた違いですからなあ!」

布美枝「ええ。」

浦木「何と言っても 金! かける金が違うんですよ! この機会に 『ゼタ』の広告責任者として 成田出版に乗り込むんです。」

布美枝「浦木さん 『ゼタ』とも 関係ないですよね?」

浦木「これから 関係を作れば いいんです。 ウヒヒヒ アハハハ! しかし 奥さん あんた ほんとに 何か 聞いとらんのですか?」

布美枝「何かって…?」

浦木「成田出版側のキーマンは誰かとか…。」

布美枝「私は 何も…。」

浦木「おかしいなあ…。 深沢が ゲゲに 相談せんはずないんだわ。」

布美枝「あっ そげいえば…。」

回想

布美枝「深沢さん どげされたんですか?」

茂「『ゼタ』も いろいろ あるようだなあ。」

回想終了

布美枝「何か あるような事は 言っとりましたけど。」

浦木「奥さんも 夫婦なんですから もっと しっかり話を 聞いといて下さいよ~! 何かと言えば 仕事仕事で ろくに 会話もないようでは 夫婦の危機ですよ!」

布美枝「そ そんな…。」

茂「まったく 何しとるんだ お前は!」

浦木「ん? ああ ゲゲ。 陣中見舞いに来てやったぞ。」

茂「どうせ 何か 探りに来たんだろ。」

浦木「実は 『ゼタ』の話を 小耳に挟んだもんでねえ。 合併の話 あれ 本当か?」

茂「知らんなあ。」

浦木「お~ 隠すなよぉ。」

茂「おいおい コーヒー いれてくれ。」

布美枝「あ~ はい。」

浦木「この 岩おこし あげるから ゲゲ ちょっと教えてくれよ~。」

茂「ついてくるな!」

いずみ「おかしな人だね。」

布美枝「うん。 いつも もうけ話しとるけど もうかっとるとこは 見た事ない。」

いずみ「アハハッ フフッ!」

布美枝「でも 当たっとったなあ。」

いずみ「え?」

布美枝「『ろくに会話がない』か…。 たまには ゆっくり 話もせんと。」

嵐星社

編集部

郁子「『ゼタ』の別冊の企画 幾つか考えてみたんです。」

深沢「おう どれ? 『女性漫画家特集』。 うん…。 こっちは 『現代漫画論』か。 いいね。」

郁子「ずっと作りたかったんですけど 今までは 予算が ありませんでしたから。」

深沢「うん。」

郁子「これからは いろいろ やれますね!」

深沢「ああ。」

(電話の呼び鈴)

郁子「はい 『ゼタ』編集部でございます! あ どうも お世話になっております。」

深沢「張り切ってるねえ。」

郁子「はい…。」

<浦木の情報どおり 『ゼタ』の合併話は 着々と進んでいるようでした>

水木家

台所

いずみ「おいしそう!」

布美枝「この間 境港のお母さんが 教えてくれたんだわ。 子供の頃 芋ぜんざいが大好物だったって。」

いずみ「ふ~ん。」

布美枝「うん 上出来。」

いずみ「茂兄さん 呼んでこようか?」

布美枝「ん?」

いずみ「アシスタントの人達も みんな帰ったし 2人で ゆっくり 芋ぜんざいでも つついたら どげですか?」

布美枝「そのつもりです。」

(2人の笑い声)

仕事部屋

布美枝「お父ちゃん 夜食 出来た…。」

茂「絵も雑だし 話も練られとらんな。」

布美枝「あれ?」

倉田「せやったら どこ直したら ええですやろか? 教えてもろたら 直します。」

茂「う~ん。 そう慌てふためいて描かんで じっくり腰 据えて 頭から描き直した方が ええ。」

倉田「腰 据えて やっとったら… 間に合わんのです。」

茂「ん?」

倉田「新人賞の締め切り 3日後に あるんで…。」

茂「う~む。」

倉田「先生…!」

茂「一生懸命なのは ええが 焦ったらいかんな。」

倉田「え?」

茂「じっくりやんなさい。 促成栽培では すぐに枯れてしまうぞ。 本を読んだり 資料を調べたり もっと勉強せんとな。」

倉田「せやけど…。」

茂「あのな~。 早こと 世に出ても すぎに消えてしまっては 何もならんぞ。 どんなに好きでも 漫画を描き 続けるというのは 苦しいもんだ。 脳みそが 空っぽになるまで 考えて…。」

茂「スカスカになっても まだ ひねり出さねばならん。 今のうちに勉強しておかんと すぐに脳みその貯金がなくなるぞ。 近道を探したらいけん。 近道 行ったら その先は 行き止まりだ。」

客間

いずみ「茂兄さんは?」

布美枝「うん… 倉田さんと 仕事の話し しとった。」

いずみ「ああ 倉田さん…。 どげしたの?」

布美枝「漫画を描くって… 大変な事だね。」

いずみ「ふ~ん そげか…。」

布美枝「毎日 あげに苦しい思いしながら 描き続けとるんだわ。 仕事が増えても 一つ一つ 精魂込めて描いとるところは 昔と変わらん。 やっぱり お父ちゃんは 本物だわ。 ん 何?」

いずみ「姉ちゃんも 本物なんだね。」

布美枝「何が?」

いずみ「ううん 何でもない。」

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