連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第11話「ご縁の糸」

居間

(戸が開く音)

布美枝「ただいま ユキ姉ちゃんが来たよ!」

ユキエ「お邪魔します。 あれ? どげしたの? 難しい顔して。 何? その写真?」

源兵衛「布美枝 ちょっと 来てみぃ。」

布美枝「はい。」

源兵衛「この人に 会ってみるか?」

布美枝「え?」

源兵衛「米子(よなご)の知り合いが送ってきた。 その気があるなら 話を進めると 言っとるが どげだ?」

ユキエ「ひょっとして お見合い?」

布美枝「えっ?」

源兵衛「会ってみるか?」

布美枝「感じのええ人だね。」

源兵衛「うん。」

ユキエ「幾つかね?」

源兵衛「38だ。」

ユキエ「10歳も上か。 老けちょ~ね 初婚?」

源兵衛「うん。」

ユキエ「どこの人かね? 安来? 米子?」

源兵衛「実家は 鳥取の境港(さかいみなと)だが 今は 東京に住んどられるそうだ。」

布美枝「東京?」

ユキエ「フミちゃんを 東京に出すだかね?」

源兵衛「お前は 横から ごちゃごちゃ やかましいわ ちょっと黙っとれ。」

ミヤコ「お父さん あの事。」

源兵衛「ああ 分かっちょ~。 今 話すわ。 この写真では 分からんがな この人 戦争中 南方 行ってとって けがをしたげな。」

布美枝「はあ…。」

源兵衛「それで 左腕がなくなっとる。」

布美枝「え…。」

ユキエ「そげなら 10も上の片腕の人の所に 嫁に出すだかね?!」

源兵衛「お前は 黙っとれって。」

ユキエ「だども!」

ミヤコ「ユキエ!」

布美枝「お仕事は 何をしとられるの?」

源兵衛「漫画家だそうだ。 東京で 貸本漫画いうのを 描いちょ~げな。」

布美枝「貸本… 漫画?」

源兵衛「うん。 本名は 村井 茂だが 漫画は 別の名前で描いとる。 水木しげる いうげな。」

布美枝「水木… しげる。 ええよ。 私 この人に 会ってみてもええ。」

ユキエ「フミちゃん?」

<再びやって来た 縁談の相手は 思いも寄らない人物でした>

2階

(ミシンの音)

布美枝「片腕か…。 服の左袖 どげんなってるんだろう?」

縁側

ミヤコ「お父さん さっきの話ですけど…。」

源兵衛「ん?」

ミヤコ「何だか 布美枝が かわいそうな気がして。 あの子も ええ年だし 高望みする訳ではないですけど もうちっと 他にええ方が おるように 思いますけんね。 わざわざ 東京にやらんでも せめて この近くで。」

源兵衛「ミヤコ。」

ミヤコ「はい。」

源兵衛「布美枝に 写真撮るように 言っちょくだ。」

ミヤコ「えっ?」

源兵衛「決めたぞ。 この話 進めてもらうけんな。」

ミヤコ「お父さん…。」

<突然の この縁談に 源兵衛は 進めの号令をかけたのです>

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