連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第130話「おかあちゃんの家出」

ミヤコ「暁子 布美枝…。」

源兵衛「戻ったか。」

輝子「あんたやち ひと足 遅かったわ。 」

源兵衛「貴司… 骨になってしまったわ!」

(ミヤコの泣き声)

輝子「姉さん しっかり!」

ユキエ「アキ姉ちゃん フミちゃん…。」

布美枝「どげなっとるの…?」

ユキエ「姉ちゃんにも フミちゃんにも 会わせたかったけど しかたなかったんだよ。」

<海に落ちてから 発見が遅れたために 貴司の遺体は 通夜を前に だびに付されていたのです>

飯田家

客間

布美枝「なして こげな事に…。」

哲也「のりを 取ろうとしとったそうだ。」

布美枝「のり?」

哲也「…ああ。」

ユキエ「ミシンの仕事 ここのところ ようやっと上向いてきて 休みの日に 好きな釣りに行く 余裕が出来たところだったんだわ。 ようけ釣って もう帰るところだったのに。」

哲也「そこで 帰っとったらなあ…。」

ユキエ「『岩のりを取ってくる』って 一人で岩場に戻ったとね。 『子供やちの好物だけん』って そげ言って。 大きな波の音がして… 友達が振り返った時には もう 貴司の姿は 見えなくなっとって…。」

哲也「なかなか発見されんでな。 こらもう 沖の方に 流されてしまったんだろうと 捜索打ち切りが 決まった時に…。 お父さんが 『もう一遍だけ 捜してごせ』と言ったんだ。 『貴司が帰ってこんはずない。 もう一遍 捜してごせ』と。」

ユキエ「その日… 岩の陰で見つかったんだよ。 不思議でしょう…? 捜しても捜しても 見つからんだったのに…。」

哲也「遺体が あがった事 お父さんに伝えたら 『そげか』と言ったきり 黙っちょった。」

ユキエ「涙も見せんで… ずっと こらえとるんだわ。」

仏間

源兵衛「おばば…。 貴司が そっちへ行ったぞ。 よろしく頼むけんな。」

寝室

布美枝「ユキ姉ちゃんも いずみも 家の方は ええの?」

ユキエ「うちは平気。 あんたのとこは 大丈夫かね? 子供 小さいのに。」

いずみ「おばあちゃんに 頼んであるけん。 たまには アキ姉ちゃんや フミ姉ちゃんと ゆっくり話したいもの。」

布美枝「そげだね。」

ユキエ「みんなで集まるの いずみの結婚式以来だね…。」

暁子「あの時は 驚いたわ。」

布美枝「ほんと。」

ユキエ「お見合いしたかと思ったら あっという間に 結婚 決めてしま~だもん。」

いずみ「即断即決。 一遍 決めたら 迷わん事にしとる。」

布美枝「いずみらしいわ。」

いずみ「東京では お世話になりました。」

布美枝「こちらこそ。」

いずみ「倉田さん すっかり売れっ子になって… よかったね。」

布美枝「うん。」

ユキエ「倉田さんって 誰?」

暁子「私も 知らんよ。」

いずみ「秘密!」

(一同の笑い声)

いずみ「ねえ 4人そろって 布団 並べるなんて 初めてじゃない?」

布美枝「ああ そげだねえ。 アキ姉ちゃんも ユキ姉ちゃんも あんたが 赤ん坊の頃に お嫁に行って 家には おらんだったけんね。」

ユキエ「いずみも おばばから 昔話 聞かせてもらった?」

いずみ「うん。 よう聞いたよ。 長い話 覚えとる?」

ユキエ「もちろん! 『空から 長い長い長~い フンドシが降りてきたげな』。」

一同『こっぽし』。

(笑い声)

暁子「おばばの作る。 おはぎ おいしかったねえ。」

ユキエ「いつだったか 最後の1つ 取りあって 哲也と貴司が 大げんかした事あったよね。」

布美枝「ああ あった あった。 貴司が泣きだしたら お父さんが 『男が おはぎ1つで 何 泣いちょ~だ』って がいに どなって。」

ユキエ「貴司 びっくりして ぴた~っと 泣きやんだは ええけど その晩 熱 出して。」

暁子「怖かったけんね お父さん。」

(一同の笑い声)

布美枝「子供の頃は いけずで カエル 捕まえてきては 私の事 追い回して。」

ユキエ「キャーキャー怖がるけん 面白がっとったんだわ。」

布美枝「うん!」

ユキエ「フミちゃんが 一番 仲よかったね。 2人で お父さん手伝って 酒屋やっとったし…。」

いずみ「釣りなんか 行かんだったら よかったのに…。」

布美枝「いずみ…。」

いずみ「突然 おらんようになるなんて 私 納得いかんよ こげな事!」

ユキエ「きっと 貴司本人が 一番 悔しい思いしとるよ。」

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