連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第136話「妖怪はどこへ消えた?」

布美枝「早苗さんが そんな事を…。」

戌井「ええ。 女房に尻を叩かれて 早速 水木さんに お願いに上がりました。 これ 見て下さい。」

茂「昔 戌井さんのところで描いた 貸本ですなあ。」

戌井「手もとに 貸本時代の漫画が 幾つか残ってましてねえ。 それ 見てると… 気持ちが高ぶってきました。 熱いんだなあ! この原稿から 何とも言えない 熱のようなものを感じます。」

戌井「力強い絵。 面白いストーリー。 目には見えない世界を見せる力。 これが 漫画ですよ。 水木さん 貸本時代の漫画 全部 文庫で復刻させましょう!」

布美枝「戌井さん…?」

戌井「どうでしょう?」

茂「自分は 構わんですが… 水木しげるの名前では 本は 売れんですよ。」

戌井「え?」

茂「今… 漫画の注文は 来とらんのです。」

戌井「えっ!」

茂「『鬼太郎』人気も終わって この先 注文が 来るかどうかも分かりません。」

戌井「僕も… 最近の水木さんの漫画は 何か もの足らないと思ってました。 正直なところ このままでは いかんと 心配もしてます。」

茂「戌井さん…。」

戌井「しかし! 水木さんが ここで終わるはずないです。 誰からも 見向きもされなかった頃 これほどのものを! 一度も立ち止まらず ずっと描き続けたんです。 売れない時代に 積み重ねた努力が 後の水木しげるを作った。 『鬼太郎』という 不死身の漫画を生み出したんです。」

戌井「今… 何が足りないのか。 それは 僕にも分かりません。 でも これだけは言えます。 『本物は消えない』。 『鬼太郎』と同じように 水木さんの漫画は不死身です。 今 スランプなら… 苦しんで下さい。 でも その先 きっと 突破口が開けるはずです!」

茂の仕事部屋

茂「俺は 何を見失ってるんだ…! 俺は 何を見失ってるんだ!」

<突破口を求めて 茂は 懸命に あがき始めていました>

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