休憩室
源兵衛「(せきばらい) 仕事中すまんが 入ってもええか?」
茂「ああ どうぞ。 あ… 掛けて下さい。」
源兵衛「ああ。」
茂「茶でも…」
源兵衛「いやいや 結構。」
茂「どげしました?」
源兵衛「村井さん。」
茂「はい。」
源兵衛「家というものは 家長を中心に 一糸乱れず 統制されていなければ いかん。」
茂「はあ。」
源兵衛「わしも 最初は ええ話だと思ったんだけども…。」
茂「何の事ですか?」
源兵衛「藍子が教員になる話だわ。」
茂「あ~…。」
源兵衛「1人で 遠くに住んだり 万が一にも そこで 勝手に 結婚相手を決めてしまうようでは 困る!」
茂「困りますなあ…。 自分も うかつでした。 まさか 試験に通るとは…。 落ちろ 落ちろと 念力を送ったのが逆効果で。」
源兵衛「そこでだ! わしに 1つ ええ考えがあ~だ。」
茂「は?」
源兵衛「見合いをさせれ。」
茂「見合い? いや~ 結婚は まだ…。」
源兵衛「いやいや すぐに嫁に出さんでも 話だけでも まとめておけばええだ。 相手は 次男か 三男にしぇ。 この近くに住む男に限るぞ。 こっちに奪い取れる男を選んで 見合いさせ~だ。」
茂「う~ん…。」
源兵衛「家庭を持つ事が決まっておれば 配属先も 考慮してもらえるかもしれん。」
茂「それは どげですかなあ。」
源兵衛「いったん 仮に 遠くに行ったとしてもだ 結婚相手が こっちにおれば 藍子は 必ず… 戻ってくる!」
茂「う~ん…。」
源兵衛「どげだ? ええ考えだらが。」
茂「なるほど!」
源兵衛「うん!」
(笑い声)
茂「なるほど!」
源兵衛「うん! アハハハ…。」
布美枝「お父さん?」
源兵衛「ああっ!」
布美枝「ここにおったの。」
源兵衛「ああ… 仕事部屋 見せてもらっとったんだ。 なかなか面白いわ。 ハハハ…。」
布美枝「上の部屋に 布団 敷いてありますけんね。」
源兵衛「おお。 明日の朝は 箱根だけん そろそろ 寝るかな。 村井さん 仕事の邪魔をして すまんだったな。」
茂「ああ いえいえ。」
源兵衛「(せきばらい) 寝るぞ。」
茂「はい。」
布美枝「そこの奥 左です。」
源兵衛「ああ。」
<その翌日の事です>
台所
佐知子「茂さんが 『急用だ』って 言うから 来たんだけど。」
布美枝「私は 何も聞いとらんですけど…。」
茂「ああ すまんな 呼び出して。」
佐知子「また お母さんに 何か?」
茂「いや~ イカルは 光男のとこだ。」
佐知子「ああ。」
茂「ちょっこし相談だ。 姉さんなら 顔も広いし なんとかなると思ってな。」
佐知子「経理の事か何か?」
茂「いや… 藍子に見合いさせようかと 思うんだが…。」
布美枝「ええっ?!」