連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第35話「アシスタント一年生」

こみち書房

布美枝「この間の『鬼太郎』ファンの人だ。」

太一「あ! あ~っ!」

布美枝「あっ!」

田中家

美智子「うちの自慢の空揚げ。 食堂やってた時の 一番人気のメニューよ。 食べてみて。」

布美枝「はい 頂きます。 おいしい!」

美智子「あ~! よかった。 食べて! 太一君も どんどん食べて。」

太一「はい。」

布美枝「お店 手伝ってるんですか? バイトか何か?」

太一「あ いや…。」

キヨ「本 借りに来て 美智子に とっ捕まったんだよ。 この人に捕まったら 誰だって こき使われるんだから。」

美智子「あら ひどい。 高いとこに 本しまうの おばあちゃんじゃ無理だから 太一君に頼んだのよ。」

キヨ「こんな年寄りが 脚立に乗れるかい?」

太一「今日 土曜だから 工場半ドンだから。 俺 本好きなんで 土曜は よくお邪魔してるんです。 おばさんの料理 うまいし。」

美智子「あら! うれしい事 言っちゃって。 何か ごちそう追加しようかな! そうそう。 そういえばね あの例の本 もう一回ね 問い合わせしてみたんだけど 出てないって。」

太一「やっぱり 打ち切りかな?」

美智子「前のが出てから 何か月も経ってるもんねえ。」

太一「『鬼太郎』だけでも 続き書いてくんねえかな?」

布美枝「『鬼太郎』? 『墓場鬼太郎』ですよね?」

太一「そうだけど。」

美智子「あら! 知ってるの? 漫画 詳しいのね。」

布美枝「いえ たまたま。 あれ 怖いでしょう。 でも太一君は そこがいいって言うのよ。」

太一「怖いけど 懐かしい感じもするから。」

布美枝「懐かしい…。」

太一「子供の頃 ばあちゃんに聞いた 昔話みたいなとこあって。」

美智子「実家は 岩手だっけ?」

太一「うん。 俺 ばあちゃん子で 親は 畑が忙しかったから。」

美智子「そう! あの本ね 目立つ所に 置き直してみたのよ。 うちの人も 『あの人の本は 面白い』って言うもんだから。 え~っと 水木 何て言ったかな…。」

太一「水木しげる。」

美智子「そう! 『その水木しげるって人の 戦争漫画 あれは 本物だ』って。 でもね 置き直してみたんだけど やっぱり 借りてく人 いないのよね ハハハ!」

太一「すいません。」

客「お願いします!」

キヨ「ほれ お客さんだ。」

美智子「はい は~い!」

キヨ「うちの息子 戦争行ってたから 見る目はあると思うんだけどね 回転しないんじゃ しょうがない。 暗い戦争の漫画なんて 今更もう 誰も読みたくないのかね。」

太一「そんな事ないです。 『鬼太郎』の漫画も暗いけど 明るく楽しいだけってのより 俺は ずっと面白いと思う。 明るいだけのは 嘘っぽいっす。」

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