連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第52話「私、働きます」

布美枝「私… 恨んどったんです。」

茂「え?」

布美枝「仕事部屋には 入れてもらえんし 知らん女の人は 入れるのにって。 」

茂「だらっ。 何を言っとる。 どげしたら 女の読者に受けるか 悩んどるとこに 天の助けか 少女漫画家が現れたんだ。」

布美枝「すんません。 けど 名前まで変えるなんて…。」

茂「う~ん あげな事は かまわんのだ。」

布美枝「…え?」

茂「名前を変えた方が売れるなら 変えたら ええ。 それも 作戦のうちだ。」

布美枝「作戦?」

茂「うん。 食っていくための作戦だよ。 ほら プロレスに おるだろう。 覆面 被って 試合しとるレスラー。」

布美枝「はい。」

茂「覆面さえ替えれば 何度でも 何度でも 戦える。 それと一緒だ。 名前を変えても 絵を描いて 生きていくんは変わらんのだけん。 それで ええんだ。 あ いっその事 もっと しゃれたペンネームを 考えておくか。」

布美枝「え?」

茂「水木洋子というのは 間に合わせで あ~ 2度は 使えんけんな。」

布美枝「そげですね。」

茂「うん。 あんた 何か考えろ。」

布美枝「分かりません 私には。」

茂「ほう~ なら あんたの名前で描こうかな。」

布美枝「ダメです。 それは。」

茂「嫌なら 何か考えろ。」

布美枝「え~っ。 ほんなら… テツ ポチ ハチ!」

茂「だら! 犬の名前考えて どげする。」

布美枝「あ そうですね。」

茂「テツって…。 あ! ごちゃごちゃ言っとって 砂糖 幾つ入れたか 分からなくなった。」

布美枝「あ 入れすぎ!」

茂「ほい 出来たぞ!」

布美枝「うん おいしい。」

茂「うまいな。」

(戸の開く音)

布美枝「何だろう?」

茂「誰か来たのか?」

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