連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第94話「来るべき時が来た」

郁子「社長… これで いいんでしょうか?」

深沢「は… 原稿 どっか変か?」

郁子「いえ 水木先生の事です。」

深沢「ああ よかったなあ。 あの人も 随分 苦労してきたけど これで 少しは楽になるだろう。」

郁子「私 何だか 腑に落ちないんですが。」

深沢「何が?」

郁子「社長が守ってきたものを 大手に横取りされるみたいで。 大手で 仕事をするようになったら もう うちには 描いて 頂けないんじゃないでしょうか?」

深沢「何 言ってんだい。 水木さんは そんな人じゃないよ。」

郁子「水木先生は そうかもしれません。 でも 他の先生方は どうでしょうか? うちと大手では 原稿料が まるで違いますもの。 賞を作って 新人を育てても 人気が出た頃に 大手に さらわれるんじゃ こちらは 何も残りません。」

深沢「そうかな…。」

郁子「え?」

深沢「沢山の人に読んでもらえるなら いいじゃないか。 何十万という読者が 水木さんの漫画を読む…。 すばらしい事だと 僕は思うね。」

郁子「それじゃ うちは いつまでも赤字のままですよ。」

深沢「まあ 何か 手を考えるさ。 優先すべきは いい漫画を 世に出す事だ。」

郁子「そうかしら…。」

水木家

居間

布美枝「どげしよう…。 これだけあったら 随分 助かるけど…。 やっぱり 返さなきゃ。」

茂「何を ブツブツ言っとるんだ?」

布美枝「通帳 記帳してきたんですけど。 他の人の口座と 間違って 振り込んどるんでしょうか? それとも 桁一つ 違っとるんでしょうか?」

茂「どれ。」

布美枝「ネコババする訳にもいかんし… あ やっぱり 正直に お伝えして。」

茂「ハハハハハ! 何を言っとるんだ。 これ 『テレビくん』の原稿料じゃないか。」

布美枝「え~っ?! 32ページで こんなに? 貸本1冊よりも 多いじゃないですか!」

茂「それが 人並の原稿料というもんだ。 貸本漫画のは… あれは 人間の原稿料ではなかったなあ。 かすみしか食えん額だけんな。」

布美枝「はあ…。 一 十 百 千…。 あ そうだ…! このお金で 電話 引きましょう!」

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