(玄関の戸の開閉音)
茂「あ~ 暑いなあ! おう ついたか 電話。」
布美枝「ちょうど 取り付け工事が 終わったとこです。」
茂「うん。 …で 何しとるんだ?」
布美枝「電話番ですよ。」
茂「電話番?」
布美枝「仕事の電話が鳴ったら パッと取らんといけんですけんね。」
茂「すぐには かかってこんよ。 取り付けたばっかりやし。」
布美枝「最初が肝心ですけん。 一本目の電話が鳴ったら パッと取らんと 縁起が 悪いような気がしますけんね。」
茂「そげか… 確かにな。 これじゃ じゃんじゃん鳴って 漫画の注文が どんどん来たら ええんだがな。」
(電話の呼び鈴)
布美枝「はい。」
茂「ほれ来た! おい!」
布美枝「あっ はい 村井でございます。 あ 冷やし中華3つ。」
茂「冷やし中華!」
布美枝「はい! ん? 冷やし中華って? あ あの うちは ラーメン屋じゃありません。 はい…。」
茂「間違い電話か。」
布美枝「へえ。」
(電話の呼び鈴)
布美枝「はい 村井です。 いえ 違います。 あ あの うちは 出前 やってません!」
茂「うちの電話番号は 前に ラーメン屋が使っとたんかな?」
布美枝「さあ…。」
(電話の呼び鈴)
布美枝「はい 村井です。 冷やし中華ですか? はっ あ はい! あ お世話になっております。 お父ちゃん。 豊川さん。」
茂「お おう!」
布美枝「今 代わりますけん!」
茂「はい。 はいはい そうです。 あ どうもどうも はい…。 あ~ そうですか…。」
<豊川からの電話は 『墓場鬼太郎』の執筆を 正式に 依頼するものでした>