庭
花子「はい 正男君。 はい フミちゃん。 どうぞ。」
正男「頂きます。」
フミ「頂きます。」
花子「かよも ひと休みして食べろし。 ずっと食べてないじゃん。 倒れちもうよ。」
玄関前
花子「(ため息)」
朝市「かよちゃん…。」
醍醐「どうなさったの?」
台所
朝市「郁弥さんみてえに 明るくて楽しい人が ほんなこんになるなんて…。」
かよ「これも食べていいよ。」
正男「ありがとう。」
花子「かよ… まるで 感情を どこかに なくしてきてしまったみたいなの。」
フミ「ねえ おばちゃん。 また 『ナミダさん』の話 して!」
居間
花子「『『よして下さい! よして下さい!』。 カエルは 夢中になって 飛び回りました。 『そんなにお泣きになると 大水が出ます』。 なるほど ナミダが ちょっと泣くのをやめて 辺りを見回しますと 水は 一刻一刻に 増しておりました。 『それじゃあ 私を この島から出してちょうだいよ。 そうすりゃあ泣かないわ』。 すると カエルは こう言ったんです。 『この島から抜け出す道は 一つしかありません』』。」
フミ「笑うんだよ!」
花子「『カエルは ナミダに言いました。 『笑うんです。 笑いさえすれば 池も だんだんに水が引いてきて 私たちは 逃げられるようになります』』。」