花子「かよ… 益田 旭さんって どういう人なの?」
かよ「画家目指して 東京に出てきたらしくて 毎日のように来てくれるの。 いつも お金はないけど 親切な人だよ。 店の椅子や棚 直してくれたり… あっ ラジオも直してくれた。 この絵 益田さんが ももにくれたんだよね。」
花子「随分 変わった絵を描く方なのね。 これ… 何の絵?」
かよ「これ ももなんだって。」
花子「てっ! これが? あ…。」
かよ「あっ でも 悪い人じゃないよ。」
花子「もも… 心配しなくていいよ。 嫌なら お姉やん 断っておくから。」
もも「ち… 違うの。 私 初めて 男の人に好きだって言われた…。 うちの人 そういう事 口にする人じゃなかったから… びっくりしてしまって…。」
花子「び… びっくりして 飛び出しちゃったの? そうだったんだ。」
村岡家
居間
旭「あ… はい…。 はい。 そのまま動かないで。 あっ! どうぞ 息は 吸って下さい。」
もも「はあ… はい。」
(時計の時報)
JOAK東京放送
廊下
花子「ごきげんよう。」
応接室
花子「ごきげんよう。 黒沢さん。」
黒沢「ああ どうも。 村岡先生 今日も よろしくお願いします。」
花子「よろしくお願いします。」
黒沢「村岡先生宛てのお手紙が こんなに届いていますよ。 さあ。」
花子「これ 全部ですか!?」
黒沢「ええ。 『ごきげんよう。 さようなら』という 村岡先生の最後の挨拶 大 評判がいいです。」
花子「まあ…。」
廊下
漆原「これは これは 村岡先生。」
花子「あ… 漆原部長 ごきげんよう。」
漆原「『ごきげんよう』の評判が よろしいそうで ますます ご機嫌のご様子ですね。」
花子「いえ そんな事…。」
漆原「では ごきげんよう。」
花子「ごきげんよう。」
村岡家
居間
<売れない絵描きの旭さんは 毎日 村岡家にやって来ました。>
旭「ももさんは どんな色が好きですか?」
もも「えっ…。 好きな色なんて 考えた事ありません。」
旭「それじゃあ 好きな季節は?」
もも「冬は 嫌いです。」
旭「僕も… 冬は嫌いです。」
もも「今くらいの季節は 好きです。 植物が太陽に向かって 毎日 大きくなっていくのを 見ると 元気がもらえるから。 あの…。 こんな話 絵と関係あるんですか?」
旭「僕は… ももさんの全てが 知りたいんですよ。」
旭「やっぱり ももさんには 緑色が似合うと思ったのは 間違いなかったな。」
もも「えっ?」
旭「太陽に輝く緑色。 これが ももさんだ。」
もも「やっぱり 変な絵に なるんじゃないですか?」
旭「変な絵には しませんってば。」
(笑い声)