花子「郁弥さんがイギリスで買ってきた 『王子と乞食』。」
かよ「この本が残っててよかった。 あんなにひどい空襲に 遭ったのに。 奇跡だね。 私は読めないけど もらってもいい?」
花子「ええ。 かよが持ってて。」
旭「ただいま。」
もも「お帰りなさい。 どうだった? 何か食べ物 手に入った?」
旭「いや… あっちこっち行ったけど ろくなもの なくて。 闇米は 高くて手が出ないし。」
花子「子どもたちだけにでも おなかいっぱい 食べさせてやりたいわね。」
もも「汽車の切符 なんとか手に入らないかな?」
英治「えっ?」
もも「甲府に行けば 食べ物 たくさんあるじゃないですか! 行きましょう!」
汽車
(汽笛)
(子どもの泣き声)
安東家
居間
花子「おかあ おとう ただいま!」
吉平「おお よく来たじゃんけ。」
英治「お義父さん お義母さん その節は 美里が大変お世話になりました。」
旭「うちの直子も お世話になりました。」
吉平「いや~ 東京は ひでえ空襲だって聞いて こっちまで 生きた心地しなんだけんど みんな無事でよかった!」
ふじ「ももから手紙もらって いろいろ そろえといただよ。」
もも「おかあ ありがとう!」
英治「ありがとうございます。」
吉平「はなと かよも 元気け?」
英治「はい。」
ふじ「吉太郎は どうしてるずらかね…。」
英治「お義兄さんとは 終戦後 お会いしてないんです。」
もも「私も ずっと会ってないの…。 連絡もなくて。」
吉平「世の中が こうなっちゃあ 軍人は… とりわけ 憲兵は ひでえこんになるかもしれんら…。」
村岡家
書斎
花子「(心の声)『アンの地平線は クイーンから帰ってきた夜を境として 狭められた。 しかし 道が狭められたとはいえ アンは 静かな幸福の花が その道に ずっと 咲き乱れている事を知っていた。 真剣な仕事と 立派な抱負と あつい友情は アンのものだった。 何ものも アンが生まれつき 持っている空想と夢の国を 奪う事はできないのだった。 そして 道には 常に間借り角があるのだ』。 『『神は天にあり 世は全てよし』と アンは そっとささやいた』。」
<ついに『ANNE of GREEN GABLES』 の 翻訳が完成したのです。>