宮本家
台所
<一方 蓮子は 出征した純平の帰りを 今か今かと待ちわびておりました。>
(戸をたたく音)
玄関
蓮子「は~い。 ごきげんよう。」
「広報です。」
龍一「蓮子?」
富士子「お母様も お父様も どうしたの?」
龍一「富士子…。 落ち着いて聞きなさい。 純平は… 8月11日 鹿児島で爆撃を受けて 戦死したそうだ。」
富士子「お兄様が?」
蓮子「いいえ。 何かの間違いです。 純平は 死んだりしません。 誰かが だまそうとしてるのよ。」
富士子「お母様…。」
蓮子「純平は 帰ってきます。 もうすぐ帰ってきます。 もう 戦争は 終わったんですもの。」
居間
蓮子「純平…。」
<一晩にして 蓮子の黒髪は 真っ白になりました。>
村岡家
玄関
(荒い息遣い)
かよ「ただいま 帰りました。」
居間
かよ「お姉やん!」
花子「あ… お帰り。 どうしたの? かよ。」
かよ「闇市で 昔のお客さんから 聞いたんだけど 蓮子さんの息子さんが 戦死なさったって…。」
花子「純平君が…。」