花子「10歳の時 初めて 故郷の甲府を出て 東京へ向かう汽車の中で 父が英語を教えてくれました。」
回想
吉平「グッド モーニング。 グッド アフタヌーン。 グッド イブニングじゃ。」
はな「何でえ ほれ。 何かの… 呪文け?」
吉平「朝は グッド モーニング。」
はな「グッド モーニング…。」
吉平「昼は グッド アフタヌーン。」
はな「グッド アフタヌーン…。」
吉平「そうじゃ。」
回想終了
花子「いつも 突拍子もない事をして 母や私たち兄妹を ハラハラさせる父ですが あの おとうがいなかったら 私は 英語に出会う事も 翻訳の道へと進む事も ありませんでした。」
安東家
寝室
吉平「はな…。」
JOAK東京放送局
スタジオ
花子「外国の言葉を知るという事は それだけ 多くの心の窓を持つという事です。 戦時中は その窓も 閉ざさなければいけませんでした。 さあ 心の窓を大きく開けて 一歩を踏み出しましょう。 それぞれに 戦争のむごさや 家族を失う悲しみを 経験しましたが 勇気を出して歩いていけば その先には きっと 一番よいものが待っていると 私は 信じています。」
安東家
寝室
ふじ「あんた。 あ…。」
<花子の声を聞きながら 吉平は 息を引き取りました。 ごきげんよう。 さようなら。>