連続テレビ小説「花子とアン」第35回「腹心の友」【第6週】

吉太郎「はなは 女学校終わったら どうするだ?」

はな「まだ分からん。 兄やん… ほんなに 兵隊さんになりてえだけ?」

吉太郎「うん。 今すぐじゃねえが 心は 決まってるだ。 ほん時が来たら おらは このうちを出てく。」

はな「そう…。」

蓮子「『君死にたまふことなかれ』。 『あゝ おとうとよ 君を泣く 君死にたまふことなかれ 末に生まれし 君なれば 親のなさけは まさりしも 親は 刃をにぎらせて 人を殺せと をしへしや 人を殺して死ねよとて 二十四までをそだてしや』。 これ 差し上げます。 私は もう 暗記するほど読んだので。 吉太郎さんが持っていて下さい。」

周造の部屋

吉太郎「おじぃやん おら 今夜 こっちで寝ていいけ。」

(鳴き声)

居間

ふじ「蓮子さん。 今 一人じゃ 抱えきれねえようなこん 抱えてるじゃねえだけ。 やっぱし ほうだねえ。 ほれは お母様にも言えねえような事け。」

蓮子「私の母は 早くに亡くなったんです。」

ふじ「はあ…。」

蓮子「芸者だったそうです。」

ふじ「蓮子さんのお母様だったら さぞかし きれいな人だったずらね。」

蓮子「私は 顔も知らないんです。 生まれてすぐに 父の家に引き取られて 乳母に育てられたので…。 一度でいいから 会いたかった…。 はなちゃんが羨ましいです。 こんなに優しいお母様がいらして。」

ふじ「蓮子さんは もう うちの家族じゃん。 こんな すすけた おかあで よければ いつでも ほうとう作って 待ってるだよ。」

蓮子「おかあと呼んでもいいですか?」

ふじ「おかあと呼べし。 (笑い声) 蓮子さん。 大丈夫だ 大丈夫だよ 蓮子さん! つれえ時にゃあ いつでも ここへ帰ってきて 泣けし。 大丈夫だ。」

蓮子「(泣き声)」

<蓮子は この時 ある大きな決断をしていたのです。 ごきげんよう。 さようなら。>

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