尋常小学校
教室
♬『あたまを雲の上に出し 四方の山を見おろして』
はな「『笑うべし。 一家挙げて笑うべし』。」
生徒たち「『笑うべし。 一家挙げて笑うべし』。」
(笑い声)
<ようやく はなも 先生らしくなってきた ある日。 一通の手紙が届きました。>
廊下
寅次「村の人が届けてくれただ。」
はな「ありがとうごいす。」
<それは ひとつき前に 遠い親戚のうちへ行った たえからの手紙でした。 切手を買うお金などない たえの手紙は 人の手から手へと渡り 何日もかかって はなの所に たどりついたのでした。>
たえ『はな先生 ごきげんよう。 お元気ずらか? おらは 双子の子守りをしながら ひもじい思いをする事も なくなりました。 でも あんまし 元気じゃありません』。
たえ『ここは 知らねえ人ばっかで おらは 独りぼっちです。 おとうや弟に会いてえです。 学校にも行きてえです。 みんなに会いてえです。 はな先生に会いてえなあ』。
たえ『さみしくて 泣きたくなる時もあります。 ほんな時は 想像の翼を広げて あの本の部屋に飛んでいくだよ』。
回想
たえ「先生 本作るだけ。 どんな物語でえ? 聞かしてくりょう。」
はな「てっ…。 『ある所に 大層太った 長い みみずがおりました』。」
回想終了
たえ『先生が作ったお話の続きを いつか 教えてくりょう。 楽しみにしています』。