はな「先生。 実は 村岡さんに断られてしまいました。」
宇田川「私の本に挿絵を描けるのに? こんな光栄な事を 断る人がいるの?」
醍醐「先生 まだ たった一度 断られただけですから…。」
宇田川「必ず 口説き落して。」
はな「お任せ下さい。 ただいま お紅茶を。」
<はなも 随分と たくましくなったものです。>
醍醐「はなさん。 何か いい策があるのね?」
はな「何もないわ。」
醍醐「えっ…。」
<大丈夫でしょうか?>
カフェー・ドミンゴ
<この2人 またいるんですね。>
武「おい 遅えぞ。」
かよ「それは 申し訳ありませんね。」
朝市「ありがとう。 頂きます。」
武「うわっ 辛え!」
かよ「カレーだから甘くねえさ。」
(せきばらい)
かよ「騒がしくて すみません。 静かにしろし。 ほかのお客様に迷惑じゃん。」
(ドアが開く音)
はな「とりあえず 作戦会議しましょう。」
醍醐「ええ。」
朝市「はな。」
はな「てっ…。 2人とも ほかに行く場所 ねえだけ? ブドウ酒 売り込みぃ東京来たなら こぴっと仕事しろし。」
武「だから こうして カフェーに売り込みぃ来てるじゃんけ。」
はな「遊んでるようにしか見えんけど。」
かよ「全く コーヒーは 苦くて飲めねえって言うし カレーは辛いって文句言うし。」
醍醐「はなさん お知り合い?」
武「てっ…。」
はな「あ… 幼なじみの朝市と武。」
はな「こちらは 聡文堂の醍醐さん。」
武「はなたれんとこの地主の 徳丸 武でごいす。」
醍醐「ごきげんよう。」
朝市「はな こぴっと仕事してますか? ご迷惑かけてねえですか?」
はな「ちょっと 朝市 余計な事 言わないでいいから!」
醍醐「ご心配なさないで。 はなさん こぴっとやってましてよ。」
朝市「はな 抜けてるとこあって 失敗も いぺえするけんど 頑張り屋ですから どうか よろしくお願えします。」
はな「もう 朝市! いいから。」
(せきばらい)
平祐「コーヒーを静かに味わいたいんだ。」
はな「すいません! あっ 社長?」
醍醐「あの… どうしたら 英治さんに 挿絵を描いて頂けるでしょうか?」
はな「宇田川先生の単行本の挿絵を お願いしたら 断られてしまったんです。」
平祐「ここで 仕事の話はしないでくれ。」
はな「失礼しました。」
醍醐「はなさんの『王子と乞食』には 自分から進んで 挿絵を描いて下さったのにね…。」
(ため息)
醍醐「『銀河の乙女』の物語が お好きじゃないのかしら…。」
はな「それなら 物語のすばらしさを 分かってもらえるように 説得しましょう。 これから 毎日でも通って…。」