かよ「お姉やんの会社の人 5人じゃないだけ?」
はな「あっ 須藤さんが遅れてくるって。」
かよ「ほうか…。 あっ お姉やん ちっと来て。 お姉やんが必要なんだ。」
「メリークリスマス。」
はな「お待たせしました。」
三田「金に困って ついに 女給 始めたのか。」
梶原「安東君 そんなに困ってるのか。」
はな「今日だけです。 女給さんが風邪ひいてしまって 人手が足りないみたいなんです。」
「女給さん。」
はな「あっ お預かりします。 いらっしゃいませ。 蓮様! 来て下さったのね。」
蓮子「はなちゃんのお誘いだもの。 来るわよ。 まあ… はなちゃん 女給さんになったの?」
はな「あっ いや これは その…。」
宇田川「ちょっと どきなさいよ。」
はな「先生 もうお帰りですか?」
宇田川「うるさくて 仕事になりゃしない。 ひょっとして… 白蓮?」
蓮子「ええ…。 失礼ですけど あなたは?」
宇田川「私の事 知らないの?」
はな「(小声で)宇田川満代先生。 私の担当の先生。」
蓮子「申し訳ございません。 現代小説は あまり読まないので。」
宇田川「こっちは よく存じ上げてるわ。」
蓮子「それは どうも。」
宇田川「私が この世で一番嫌いな女よ。」
蓮子「お目にかかれて光栄です。」
宇田川「大正三美人の一人とか いわれて いい気になんないでよ!」
蓮子「ごきげんよう。」
(ドアが閉まる音)
醍醐「蓮子様! ごきげんよう。 お久しぶりです。」
蓮子「あら 醍醐さん! ごきげんよう。」
三田「ごきげんようの嵐だな。」
はな「いらっしゃいませ。」
郁弥「皆さん メリークリスマス。」
蓮子「村岡さん ごきげんよう。」
英治「どうも。」
かよ「お姉やん。 須藤さん まだけ?」
はな「あ… どうしたんだろう?」
かよ「まだ9人しか集まってないじゃん。 どうしよう…。」
玄関前
(笑い声)
龍一「お祭り騒ぎだな。 たまには いいだろ。」
<おやまあ クリスマスだというのに 吉太郎は 憲兵のお仕事ですか。」
尾形「浮かれやがって。 ブルジョアは敵だの 革命を起こすだの 大層な事 言ってるくせに 所詮 ああいうシュギシャは 頭でっかちの なまぬるい坊ちゃんさ。」
吉太郎「同感であります。」
尾形「どうする? この様子だと 当分は 出てこないぞ。」
吉太郎「自分が店に入ります。」
尾形「それは さすがに まずいだろ。」
吉太郎「大丈夫です。」
ホール
朝市「武! やめろし。」
武「いいじゃん いいじゃん。」
朝市「やめろし!」
武「触りてえ…。」
田中「もう あの女には関わるなと 言ってるだろ。 この店には 石炭王も来るそうじゃないか。」
回想
嘉納「おお… よう似合うちょるばい。」
回想終了
龍一「かよちゃん。 強い酒をくれ。」
かよ「はい ただいま。」
蓮子「龍一さん。」
龍一「今日は 石炭王と ご一緒じゃないんですか?」
蓮子「あの日は ごめんなさい。 お目にかかって謝りたかったの。」
武「どうも。 お久しぶりじゃん。」
蓮子「あの…。」
武「はなたれんとこの地主の 徳丸 武でごいす。」
蓮子「ごめんなさい。 どこのどなたか 全く思い出せないわ。」
武「てっ…。」
朝市「蓮子さん。 お久しぶりです!」
蓮子「あら 朝市さん! お懐かしいわ。」
朝市「てっ! 吉太郎さんじゃん!」
はな「てっ 兄やん!」
かよ「兄やん! 来てくれただけ!」
吉太郎「いや… たまたま通りかかったら すげえ にぎわいなんで…。」
かよ「やった! これで10人じゃん!」
吉太郎「えっ?」
蓮子「勢ぞろいね。 吉太郎さん 乾杯しましょう。」
吉太郎「いえ 実は まだ 仕事が残っていて…。」
朝市「軍隊の仕事も忙しそうじゃん。」
吉太郎「まあな。」
武「ふんだけんど どうして 蓮子様と知り合いでえ?」
朝市「蓮子さんが甲府にいらした時 はなと吉太郎さんと一緒に 4人で釣りをしただ。 蓮子さん こ~んな でっけえ魚 釣っただよ!」
武「てっ!」
蓮子「大げさよ! このくらいだったわ。」
朝市「こんな!」
(笑い声)
蓮子「でも 楽しかったわね。」
回想
(歓声)
蓮子「釣れたわ! 釣れたわ!」
回想終了
梶原「じゃあ お先に。」
英治「では また。」
梶原「うん。」
はな「ごきげんよう。」
醍醐「ごきげんよう。」
龍一「あ~ かよちゃん。 踊ろう!」
かよ「てっ? てっ てっ…。 てっ… お客さん! てっ!」
はな「蓮様…。」