直子「こんな田舎くさいん… 着たかて どうせ ばかにされるだけや。」
糸子「はあ? 何 訳 分けわからん事 言うてんや。 さっさと詰めて ちゃ~っと送り! はよ! ああ もう… よしよ。 ほれ!」
階段
糸子「こら 聡子!」
聡子「はい!」
糸子「あんた『うちの階段で 足 鍛えな』ちゅうたやろ!」
聡子「はあ…。」
<聡子は 相変わらず この調子>
聡子「ふ~ん…。」
<ネジ1本… いや 5本くらい 抜けてるような顔して…>
オハラ洋装店
昌子「はれ 聡ちゃん また どっか行くん?」
聡子「うん。 川原 走ってくる。」
<これで 案外 テニスは強いらしい>
玄関前
北村「おう!」
聡子「あっ 北村のおっちゃんや。 どないしたん?」
北村「お前んとこの お母ちゃんに ちょっと用事や。 拾い食いすんな~。」
聡子「せえへんわ!」
居間
千代「すんませんなあ。」
北村「わいの方こそ 悪いのう。」
千代「いいえ~ そんな。 はい どうぞ。」
北村「おおきに。」
千代「これも どうぞ。」
北村「わあ~。」
糸子「こら。」
北村「おう。」
糸子「あんた 誰の許し もうて 勝手に上がってんじゃ?」
北村「お~ 昌子や昌子。 昌子が『上がってって』言うさかい わい ごっつい忙しいのに わざわざ 靴 脱いで 上がっちゃあったんやんけ。」
糸子「昌子のアホが ほんまに…。」
千代「ほな 北村さん 今日は ええ塩辛が ありますよって あとで。」
北村「あら そない おかあちゃん かまわんとってよ~。」
糸子「いらんいらん。 こいつに食わせる 塩辛なんぞ ない! いらんで!」
千代「はいはい。」
北村「ところでよ。」
糸子「何や?」
北村「サンローランが 新作 出したの 見たけ? 今年の春夏の トラペーズライン。」
糸子「何で知ってんや?」
北村「常識でしょう。 わいも この道10年やってるさかいのう。 なめてもらっては 困るわ。 おかげさんでよう うっとこの店も ごっつい順調に 売り上げ 伸ばしてんやし。 ま お前んとこみたいなオーダーメードは どうか分からんけどよ わいとこみたいなレディーメードは これから 絶対に まだまだ伸びる。 せやから わい ここいらでよ 一発 勝負かけちゃろ 思てんやし。」
糸子「ほうか。」